ガリ。
「いてーよ」と言っていたのも、可愛いうち。今では顔を顰めることもしなくなった。
太い腕に抱かれ、肩甲骨のあたりを歯型がついてもなお、重ねてつけていく。
ガリ。ガリ。ガリ。
痛い。痛みしかない。情事の最中であっても快感に変わったことはない。存在を示している中のものよりずっと
痛くて、重い。
「るう」
途切れそうな声だった。今にも張り裂けそうなほど、切ない声音だった。
なんだ、と髪をかきなぜた。硬い髪質が実のところ好きだった。
「愛してる」
真摯な目が、訴える。
俺も、と撫ぜた。
彼は不満げに双眸を揺らがせ、再び噛み付いた。
ガリ。ガリ。ガリ。
愛が、重い。愛されすぎて潰されてしまいそうなほどだ。
慎重に優しく進めるし、噛み付く以外はキスすら優しい。前戯も丁寧で、準備から手ずからしてくれるのだ。終わった後は、それはそれはガラスの靴を扱うような繊細さで清めてくれる。
情事だけでない。日常に至るまで。
いつか。いや、既に。
どろどろに溶かされているのだろう。身体ごと、この心すら。溶けた身体に手を突っ込んで、容赦なく心を奪い取るのだろう。同じく形の失われたそれを。
「るう」
けれど、この心臓だけは溶けない。鋼のような確固たるそれは絶対に。どんなに蕩けるほど甘やかされようと、
甘く甘く料理されて仕上げられていても。この心臓だけは失わず、保つ。
「愛してる」
だから、怯えないでくれ。
「愛してる」
「るう……」
おまえを愛する心臓だけは、何よりも強いんだ。
「るう」
おまえが愛を囁くたびに甘く。
おまえが名を呼ぶたびに強く。
「愛してるぜ、レオ」
この心臓は、おまえを愛する。

聖さんより、「溶けないチョコと溶ける心」
     
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