讃美歌(ファンタジア) - Love Songs-
 ここは祈りの聖地 行きつくところ
 祈りを捧げよ さすれば救われん
 祈りを欲せよ そうして括目せよ
 祈られた世界のなんと惨たらしさを

 ここは祈りの聖地 辿りつくところ
 愛せよ そして愛されるだろう
 夢を語り 明日へ向かって笑い合え
 知るがいい 祈る世界の幸せなことを

 ここは祈りの聖地 終わるところ
 祈りは絶えた さすれば戻れん
 祈りは失われた 人々は息絶える
 さあ今こそ祈るがいい 戻してくれと

 祈れ
 祈れ
 祈れ
 ここは、祈りの聖地である













「……」
 小高い丘。夕日が今正に昇ろうとしているところだった。赤く、橙色に染まった美しい光景を眺めていた。
 歌い終わった少年は、ふうと息を吐いた。
 迫りくる夕焼けに、双眸を眇めた。
 手を翳し、覗いた陽光からは温かさと、それから冷たさを感じた。
 ふと足元を見遣ると震えていた。ずっとただ無心に歌っていたからか、身体が先に限界を迎えているようだ。
 少年はしっかりとした体格で筋肉もあり、日ごろから身体を作っていることが瞭然である。美しい歌声を響かせた少年はじっと昇りつつある夕日を眺めていた。
 青空を染めて、赤へと浸食していく。
 その反対側では、夜が徐々に増していき、今にも夕空を飲み込まんとしていた。
 そうして、少年はまた歌った。












 いけないんだよ、と指さした
 何も知らず無知であるが故の特権である
 何をしているのか、と非難した
 知識を得たと過信したが故の特権である

 我らは神に愛されたいとし子
 無知を愛されたいとし子

 知識を与えたもうた神は地上にはいない
 人は人を裁き弾劾する
 神が愛した人は天上にはいない
 神は人を眺めつくった

 人は神の創造物
 神は人の創造主

 人は地上を支配し
 ついには天をも支配せんと剣を掲げた
 我らはいとし子 神の偉大なるいとし子












 そうして、少年は地に足をつき、血をつけた。
「っぐ、……」
 もう二度とは歌ってはならないと言われた歌声を最後に響かせて。
 少年は世の無情を歌った。
 歌って、歌って、歌って。
 もう二度とは歌えないことを決して認めようとはしなかった。

     
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