その2
もしも左杏がママ、右杏がパパだったら



「いだいよー」

「よしよし、大丈夫ー?」

 語尾は伸びていますが、決して心配していないわけではありません。

 これが葛葉家の大黒柱、右杏パパの地なのです。

「パパ、ママが叩いたぁー」

 朝っぱらからぶっ叩かれて起こされた葛葉家の息子楔ちゃんは朝から泣き出します。

 これも毎朝の日課です。

 楔ちゃんは何時も左杏ママの、

「ハリセンで叩かなくてもいいじゃん、さきょちゃん」

 巨大ハリセンで起こされます。

「うっさいなあ」

 リビングに下りてきて早々、文句を言われた左杏ママは右杏パパに文句で返します。

 この場合、双子じゃなかったっけとかいうツッコミは無しです。

 無しなんです。

 無しったら無しなんです。

「楔ちゃん、おめめが真っ赤だよー」

「ふぇ…っ」

 楔ちゃん、朝からハリセンで叩き起こされたので本気で泣いてます。

 鳴いてはいません。

 嘘泣き出来るような器用な子ではありませんから、楔ちゃんを慰めるのはチャラい右杏パパの仕事です。

 左杏ママは不機嫌そうに、巨大ハリセンを掌にパンパンしながら楔を睨みます。

 怖いです。

 楔ちゃんが怯えています。

 何という恐妻なのでしょう。

「さきょちゃん、ハリセンじゃなくても…」

「文句があるなら、起こさないよ」

「ふぇ…っ、お母さんごめんなさいーっ」

「ま、次から気を付けな」

「うんっ」

 左杏ママは楔ちゃんの笑顔に悶々します。

 飛びついて来た楔ちゃんは天使そのものです。 

 こんなことが毎日繰り返される、葛葉家でした。
     
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