二
それから、母親のウコッケイはみるみる憔悴していった。
父親のシロウサギが手を尽くして方々を当たっても一向に消息は掴めなかった。
九尾とは、人里や生き物達と住む世界を異にして暮らす存在である。一介の飼い慣らされた動物ごときに見つけられるわけがなかった。
日に日に気を落としていくウコッケイを、シロウサギは慰めた。けれど、母親のウコッケイの心が慰められるはずもなく。
シロウサギにとっては、数多いる子供のうちの一人に過ぎず、ウコッケイが唯一無二である。その違いこそが決定的な違いとなり、ウコッケイを慰める言葉にも心を痛めてしまうこともあった。
シロウサギもこのまま傍観する気はない。
ウサギよりも寿命が長いはずのウコッケイ。本来ならば、先に寿命を迎えるのはシロウサギであるはずだった。
しかし、日を追うごとに気力をなくしていくウコッケイに後を追うのがシロウサギになりかねなかった。
このままでは、置いて行かれてしまう。
そんなことは今まで考えもしなかった。
現実として直面し、初めて焦燥を覚えた。
置いて行かれたくない。自分が置いて行き、追いかけてきてくれることを信じて待つつもりだったのに。
「必ず……」
言葉の続きは、視線が雄弁に語っていた。
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