オワター↑ オワタオワタ我が人生♪↑↑
飼育小屋の隣でウサギが一羽生まれた。
白黒のウサギたちがほのぼのと暮らしているお隣の小屋と、我らウコッケイは仲がいい。ウコッケイもウサギと同じくほのぼのとした気性で、反対側のお隣さんのオカン属性のニワトリさんたちより気が合う。
フェンス越しから新しい命を祝った。
しかも、母親となったクロウサギはオスだったため、母子ともに命が危ぶまれていたのだ。
父親のシロウサギは、それはそれは人のいいならぬウサギのいいオスだったから、横でハラハラと見ているしかなく、我々ウコッケイはそんな夫にハラハラしながら出産に立ち会った。
皆に祝福されて生まれた命は、ウサギみんなが親となり、時には我々ウコッケイがフェンス越しに話しかけることで親のようなかんじになった。
それが、ついこの間の話。
ワタシは忘れていた。
ウサギの成長速度が我々ウコッケイと同じということを。最近生まれたばかりのような気がしていたが、人間に換算するとウコッケイもウサギも一歳で二十歳に等しいのだということを。
「ねえ、聞いてる?」
このワタシを押し倒した生まれたばかりのウサギに、たった今思い知らされた。
「い、いいいいいったいどうやってここに……?」
「カンタンだよ。キューキュー泣いてイタイイタイ言ってたらオヤサシイ人間様が出してくれたんだよ」
あっちに行きたい、って言ったら仲がいいから大丈夫とか考えたんだろうね。まあ、その通りだけど。あ、別な意味で大丈夫じゃないか。
と、ツラツラ述べるシロウサギをワタシは見上げた。別な意味ってなんだ、別な意味って。
嫌な汗が滲む。
シロウサギは笑っているのに、なぜか笑っていない。背後に恐ろしい空気を纏っていて見るものを圧倒される。
他のウコッケイはぐっすり眠ってしまっている。ウサギたちも同じだろう。
せめて、と最後の救いでニワトリのオカンたちを見やったが、こちらもすやすやと夢の中。
オワタ……オワタ……。
「アンタ、オメガなんでしょう?よかったぁ。ボク、アルファなんだぁ」
知ってる。
三か月に一度訪れる発情期真っ只中なんだから、ワタシの上に乗っかるウサギがアルファかベータか、それとも同種か。すぐに分かる。
そして、このウサギがアルファの中でも特別なんだということも知っている。
シロウサギは、ワタシの首筋のにおいをすんすんと嗅いだ。途端、近くなる距離。
ぶわっと、身体が熱くなる。
「ひぃあッ」
「さっきから、アンタすっげえいいにおい……」
近まった距離、首筋にかかる鼻息、吐息。ウサギ独特の髪のにおいに混じったアルファのにおいが鼻を擽る。
ずくん、と股間があらぬ反応を示す。
「ん、おいし」
「ひぃッ」
首筋を舐められた。
ぞくぞく、と走るむず痒さとはまた違った感覚。
知っている。けれど、知らない。
発情期にいつも訪れる感覚。それよりも、ずっとずっとスゴい。
「ウサギにもオメガがいるけど、全然違うね」
そりゃそうだろう。なんたって、アルファはその他大勢のオメガよりもひとつを見つけ出す。それは、オメガも同様。
「ダディとマミィよりもオッサンなのに、こんなに可愛くて、それがオメガ?これってなんのゴホウビ?」
「ん、……はな、せ……」
「やぁだ」
シロウサギはワタシの身体を抱き上げ、膝の上に乗せた。軽々と出来てしまうほどいつのまにか成長していたようだ。背丈もすっかり追い抜かれている。
心臓の音が近い。ゆっくりと刻まれる命の音。
ワタシはシロウサギの胸板に凭れ掛かる他なかった。こうも近付かれてしまっては身動きひとつ出来ない。身体は熱いし、疼くし。
「しかも、俺の運命の相手がアンタだなんて……最高だよ」
「あ、ひぃいいいいッ」
「これで、俺のもの」
うなじに大きな熱が降った。噛まれたのだと気付いたのは、シロウサギが満面の笑顔で見下ろしていたから。
まさか、とうなじに触れるとデコボコと噛みあとが刻まれていた。
「お、おま……っ」
「俺の永遠の運命、生涯の恋人。大好きだよ」
宛ら詩を詠うように。紡がれた愛の言葉に愕然とする。
いつから、なんて愚問だ。生まれたときから知っていた。シロウサギがワタシの運命の相手だと。
その頃から他のウコッケイやニワトリ、ウサギがフェロモンを感じなくなった。
そして、生まれたときから感じていた―――鋭い視線。
「シアワセとかはわかんないけどさ、死んだときに俺といてよかった、って人生にするよ」
父親や母親よりも年齢の離れたワタシに、似合わないプロポーズは、正直きた。
だって、どうせ人間でいうなら十年かそこらでぽっくり逝ってしまう短い一生なのだ。それを保障されるなんて思ってもみなかったんだ。
だから、これは、うっかりなんだ。思いもよらぬ言葉で口説かれたから、つい堕ちてしまったんだ。
「……シアワセに、なってやるよ」
その白いアルビノじみたうなじに噛みついたのも、つい、なんだ。





なめていた。
「ぁ、あっ、あっ」
ウサギの精力をなめていた。完璧に頭の中からすり抜けていた。
ずっと発情期に入っていたワタシにあてられ続けていながら耐えていたのだろう。ふうふう、と荒い息を紡ぎながら、もう何ラウンドめになるか分からない回数に突入するシロウサギ。
はじめてだというのに無理矢理押し入って、血が流れるのも構わず腰をふりたくり、初っ端から中出ししてくれたおかげで、抜き差しするたびに溢れ出る白濁としたものが伝う。
「あぁっ、……ねが、も、だっ、だめ……」
正直もう体力も精神も限界だった。気絶してはスパンキングで起こされ、こんなハードプレイは望んでいなかったと何度泣いたことか。
シロウサギは泣き顔により興奮してスパンキングしまくってくれたからお尻が熱い。
ワタシがいったい何をした……!
夫となるアルファはそういえばまだ生まれてから一年にも満たないから人間で言うと十代前半。それもそうだ、と言われればそこまでだ。
だが、このド鬼畜ぷりは年のせいなのか!?
「くっ、イク……イク、イク……よっ」
「も、もいらにゃぁあああああっ」
まだ勢いを失わない飛沫が最奥に叩き付けられる。
ワタシのシロウサギのものより小ぶりな竿からは、もう何も出ない。飛沫を感じて、ワタシは快感に打ち震えた。痙攣に近い感覚で、暫く止まらなかった。
「うわぁ……うわぁうわぁうわぁ……可愛い!」
「は、は……へ……」
「俺のタマゴを十個くらい生めるくらいガンバルね!」
「へ、あ、あああああぁっ!」
再開された律動は、ガツガツと最奥だけを狙って穿たれた。
まだ痙攣は終わっていなかったのに、快感がプラスされてワタシは頭の中が吹っ飛んだ。
「あ、あああんんんん、んぁ、っ、あ、あああああああ!!」
身体の奥に熱が放たれるのを待てず、ワタシは意識を失った。
しかし、この若者ウサギがそのくらいで止まるはずもなく、白目を剥いたワタシに構わず腰を振り続けたのだった。
最悪なことに、意識を取り戻したワタシはぶっ飛んでて、あへあへ言いながらもっともっとと腰を振ってねだったと聞かされたときは天命を待たずして死にたくなった。シアワセなんてなりたくない。










「あああああああああ」
ワタシは頭を抱えた。
「どうしたの?スゴいことじゃん」
「うるさい……」
ワタシの唯一のアルファ―――番となったシロウサギはニコニコと孵ったばかりの雛を撫でた。ピィピィワタシとシロウサギの腕の中で鳴く雛たちは本音を言うと―――うるさい。
何故なら、宣言通り、卵十個分注いでくれたからだ。
種族も越えて生まれた雛たちは元気に生まれてきてくれて良かった。ワタシがオスということもあって母子ともに危険と言われていたが、みんな無事に生きている。
けれど、この憎きシロウサギの子どもだと思うと可愛さあまって憎さ百倍、顔を見るのも今は遠慮したい。
シロウサギはワタシが卵を腹に抱えているときも、温めているときも構わずヤりまくってくれたのだ。最早生涯のパートナーと雖も憎い。
しかも、
「おおー動いた動いた!」
「かわいいのぉ」
「めんこいわぁ、ひょこひょこして」
「お、こっち向いた!」
仲間たちの声にワタシは青筋を浮かべた。
ワタシがシロウサギのオメガとなり、すぐに子どもを抱えたことで、ニンゲンたちは急遽新しい飼育小屋を建てた。―――ワタシとシロウサギ、それから生まれてきた雛たちだけの小屋を。
おかげでウコッケイの仲間にはからかわれるし、ウサギたちには興味津々といった様子で根掘り葉掘り聞かれるし、オカンなニワトリたちには母親になるための蘊蓄を日がな一日垂れ流されるし碌なことがない。
剰え、シロウサギの両親はいい嫁を貰ったと感涙に咽び泣き居心地悪いことこの上ない。
かくなる上は、
「おまえをいじめて憂さ晴らししてやろうか……」
「うみゅぅ?」
唯一ワタシの腹からウサギの姿で生まれた、シロウサギそっくりのウサギ。
元気にそこらじゅうを動き回る雛たちと違って、大人しくワタシの腕の中ですぴょすぴょ眠っていた。
目を覚ますと、まんまるの赤い目でワタシを見つめる。
「なんで一番こいつに似ているこの子が可愛いんだ!!」
雛たちは、シロウサギが生まれたときにそっくりだった。
しかし、何を間違えたのか、仔ウサギは恐らくワタシそっくりで大人しい。シロウサギにそっくりだったら毎日ママごめんなさいと泣いて縋るくらいいびってやったというのに、なんと憎たらしい!
これも父親のせいなのか!?そうなのか!?こいつ呪いでもかけたんじゃないか!?
「ママ」
「ハァアアンッ?」
ワタシを犯しまくったくせに、拙い口調でふざけた言葉で呼んだシロウサギを顧みる。
すると、唇に柔かい感触が降る。
「ありがと。愛してるよ」
「〜〜〜ッ!こんなんで騙されると思うなよ!?」
「さぁーて、名前どうしようか」
「聞け!」
とかなんとか言いながら、結局はほだされるのだろう。
そして、そう間を置かず仔ウサギが一羽生まれることになる。
「わぁ、マミィに似て可愛い!」
真っ黒の仔ウサギを抱き上げたシロウサギに、ワタシは諦めが肝心という言葉を深く胸に刻むのであった。



ああ、ワタシの人生オワタ!!!




     
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