「あっははははは!」
笑い声が響く。
伽耶琴の音を劈き、妓女の笑い声を伴って。
男はしなだれかかってきた女の肩を抱き、酒を一気に呷った。
中身のなくなった杯に、酒を注いでまた呷る。もう大分長いこと、この配分で飲んでいた。
妓女達はそれを止めることもせず、また止めようとする素振りもなく、男と宴を楽しんでいた。
伽耶琴に合わせて舞い踊る妓女の美しいこと。派手な着物を纏い、流し目を送る妓女は、一見しただけでどんな男をも虜にするだろう。
男も酒で虚ろになった目を妓女に向ける。その双眸は愉悦に彩られており、妓女を物色しているようだった。妓女もその視線の意味を知りつつ、敢えて艶やかに笑んでみたりと男に媚を売った。
男は酒を注ぎ、呷る。そして、くつくつと笑った。
男を虜にしようとあの手この手を使う女の戦いの浅ましいこと。男は朝廷で蹴落とし合い、女は床で蹴落とし合う。それがこの世の条理であるように。
自分を一番に見せようとどんどん動きが大きくなって行く妓女達は、男の目にどのように映っているのかなど関係なく。ただ一晩の男の相手を求め、その対価を求めている。
「ねぇ、旦那様。今日はわたしになさりませんこと?」
男にしなだれかかっていた妓女が囁く。
紅の目立つ女は、目は丸く愛らしく、まるで少女のような顔立ちで、しかし胸や尻は大きく、括れもあって女という武器を押し出していた。
「んー?」
男はまるで囚われたように、妓女を見詰めた。
男の腕に精一杯しがみついて、丸い目を上目にして男を誘っていた。
すると、反対側から甲高い声があがる。
「ちょっと!旦那様は私のものなのよ?あんたは今日は外よ!」
「なんですって?」
二人の妓女の間で言い争いが始まった。
男はそれを止めようとはしなかった。
酒を注ぎ、呷る。髪をひっ掴むほどの醜い争いになろうとも一切手出しはしなかった。
ただ、それすらも余興であるかのように酒の肴にして、酒を呷った。
しかし、それでは埒が明かないと踏んだのだろう。妓女は男が酒を都合とした腕を掴んで止めた。
「ねぇ、旦那様はどっちがいいの?」
「私でしょう?ねぇ、旦那様」
「んー?」
だがしかし、男は明確な返事を返さなかった。
妓女達は当てにならないと悟り、またもや二人で言い争う。
男はくつくつと笑い、酒を呷った。
目の前には豪勢な料理もあり、時々それをつまむ。濃い味付けのされたそれは決して好みのものではなく、だが、酒の肴にするにはもってこいのものだった。
鶏肉を茹でたものをくわえ、骨までしゃぶる。すっかり食べ尽くした骨をまじまじと眺め、男はまたくつくつと笑った。
おかしかった。
まるで、この鶏肉の骨のようだ。自分も、女も。
それに気付いていながら、この生き方をやめられない。これ以外に生き方を知らない。なんて滑稽だろうか。
「もう旦那様ったら!」
「早くお決めになって」
妓女達ではやはり解決には至らず、またもや男に声がかかる。
男は二人をまじまじと眺め、口角を持ち上げた。
紅の目立つ女は、胸も尻も張って若々しい。目も大きく愛らしくて、少女の瑞々しさを味わえるだろう。
もう一人は、目が細くつりあがっていて冷たいようだが、細身で抱き潰してやりたいような衝動に駆られる。
つまり、どちらと決めるには惜しい。
男は考えることはしなかった。最初から放棄していた。
料理ののった机を退けて、二人の妓女を押し倒した。男の腕の中にいた妓女二人は期待の眼差しを向けてきた。
そして、着物を剥ぎ、白い上衣も脱がして下衣のみにしてやる。露わになった二つの身体は若々しく、男なら一度はむしゃぶりつきたい極上のものだ。
他の妓女は好奇心に満ちた目で見ていた。下がることもせずに、舞や伽耶琴を続けながら、視線は男らにあった。
そのせいで、舞も伽耶琴も酷いものになっていたが、男は気に留めなかった。
「混ざりたいものは混ざれ。全員分の金は払ってやろう!」
男が他の妓女らに言うと、黄色い歓声があがる。
そして、伽耶琴や舞の手を止め、房にいた妓女が男らをぐるりと囲むようにして側に寄った。
「全員囲むだけか?それでは俺の興味は唆られんな」
男がわざと挑発してやると、興奮の高まった妓女達は勝手に着物を脱ぎ始めた。白の下衣だけになり、足袋すらも脱ぐ。
一人の妓女が進み出て男の手を自分の下衣の紐に持って行った。
男は妓女の望み通り、紐を外してやり、下衣を剥いだ。妓女は一糸纏わぬ姿となる。
次に、既に脱ぎ去った妓女が男の上衣を脱がす。
男はされるがままになり、他の妓女が競って自分を脱がして行くのを楽しそうに眺めた。
とうとう皆が生まれたままの姿になった。
男は最初の妓女二人も同じようにしてやる。二人は恥じらう素振りもなく、嬉しそうに身を任せた。
まるで、酒池肉林だ。男は嘲る。
「さあ、俺を愉しませろ」
男がそう告げると、次々に妓女達の身体が男に伸びた。
ある者は胸を、ある者は尻を、またある者は叢を、またある者は小ぶりな叢の奥を、そしてある者は肉壺を男に押し付けた。
男は触ってやることもせず、妓女達の動きに身を任せた。
一人が男の肉棒に手を伸ばし、それを壺におさめると、もう後は雪崩のように。
次々と妓女達は男の肉塊を欲しがり、男に愛撫をくわえながら腰を揺らして男を誘った。
男は笑って、それを受け入れた。
     
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