太宗嘉定君
「那珂公!那珂公…ッ」
「公主媽媽!」



 結婚とは実に虚しい、儚い夢だ。愛し合っていても子供が出来れば違和感を覚え、他に目を向け家庭という庭は壊れる。愛し合っていなくても、本当に愛している人はこの人じゃないと言い聞かせ、単なる家庭の一つでしかなくなる。
 恋心もまた然り。虚しく儚い夢だ。愛し合っていても、生涯の想い人と交わした約束を容易く違え、他に目を向ける。距離が離れ、共に暮らせるようになっても離れた時と離れる前を思い浮かべてしまう。あの頃は良かったと、思い出しては溜息を殺し、何かが違っているように感じてしまう。
 愛だの恋だの。そんなものはする気がおきないし、何人も妃嬪を迎えようとも変わらなかった。彼女らが子を産もうと他人事のように眺め、決められた日取りに決められた相手を訪い、全て決められていながらも疑問すら抱かず従っていた。
 心はない。否、自分という人間が、真実この世に生を受けたのかさえ曖昧で。生きている自覚が持てず、自分自身のことも何処か遠くで眺めていた。
 でも、耳に―頭の奥深くに響く声がある。ずっと耳鳴りよりも酷く、木霊するように。それが何か知っているし、煩わしいとかの感情を持てなくて。
 心臓辺りを締め付け、絞られている。そんな感覚が絶えず続いていた。そんな時は決まって死にたいと思う。生きている感覚もないから死んでいるのかも曖昧で、死に希望は抱かないが無意味に過ごすくらいなら死にたいとふと思ってしまうのだ。頭の感覚はぼやーっとしていて、実質それが自分の考えなのかも判別がつかなかった。
 人間なら誰もが羨み欲する椅子に座りながら、それにより引き裂かれたものがこんな感情かも分からない分別のないものを作り出したのなら。なんて皮肉なものだろう。
「殿下…ッ、あァ、殿下…」
 艶を帯びた嬌声に意識を戻された。目前にはソッチョゴリすらはだけられず、ソッパジは辛うじて脱がされてはいるが、ソッチマは脱がされていなかった。ソッチマから伸びるしなやかな細く白い、それでいて体毛の薄い足が大きく開かれている。無意識のように見せかけているが、わざとだということは見え見えだった。そんなもので興奮は出来なくて、一物が萎えそうになりながらも視線を逸らさなかった。
 ソッチョゴリから覗く豊満な乳房が、蕾を解すと快感に反応してゆさゆさと縦横斜めと縦横無尽に揺れた。これ見よがしに露出された黒ずんだ尖りにすら興味を示さず、しかしだからと言ってこのまま突っ込めば相手が痛い思いをするし、寝床を汚したくはなくて十分に解すしかなかった。
「殿下ァ、チョ、な……ぁアッ」
 緩急をつけたり、回したり浅くしたり深くしたり。そんなこと一切合切していないのに、きっと下手だと思っているはずなのに、形だけでも喘がなければならないものなのか。酷く理解に苦しむ。
「あ、あ、ふぅっ、んんぁ…」
 何時もこうだ。相手の気持ちが高ぶっている時には必ずと言っていいほど、愛おしい存在を思い出す。
 触れることすら烏滸がましく、本当に触れていいのか恐る恐る尋ねてしまった。恥ずかしがり、頬を赤く染めながらお願いしてきた時は肢体を貪りたくなってしまった。膣を指でこじ開けることでさえ、躊躇い、そんな自分に情けないと落ち込めば寝床に着けた体を支えていた手の上に手が重なり。顔を見ればいっぱいいっぱいの筈なのに、それでも大丈夫だと言い聞かせてくれた。
「殿、下…ヒぃアッ……あ、んぅっ」
 十分に解れたことを確認し、一物を取り出して幾度も使われた秘部にねじ込んだ。中は熱くうねっているが、狭くはなく、何処で使ってきたのかガバガパだった。
 想い人は嬌声が漏れそうになるのを必死に堪え、声を聞かせてくれと噛まれた唇をなぞれば耳に心地良い喘ぎが聞こえた。醜い声は聞かせたくないと、意味の分からない、けれど可愛らしい我慢をしていたのだ。ソッチョゴリもソッチマも剥ぎ、豊満ではないが形の美しい乳房も、少しだけ体毛の濃い肢体と蕾を隠す茂みも、臍も全て包み隠さず開き見せてくれた。嬉しくなって礼を言った自分に、涙を流して頷く彼女を見ているだけで満たされた。
「殿下、殿下…ハ、アァッ」
 寝床の横に置いておいた瓶の栓を抜き、一気に飲み干した。苦味が一気に口内を占め、亀頭が膨張させられ、気持ちが高ぶらされた。勢いのままに突き、奥を狙って速めた。
「ひ、い、ぃ、イィィッ。アあ、殿下。殿下。チョ…ナ……あァッ」
 絶頂を迎えようとしている相手の陰核を鷲掴み、ビラビラと指で弾いてやる。直接的な愛撫になす術もなく、恍惚として絶頂を迎えた。絞められる感覚に高ぶっていた竿は耐えきれず、耐えようともしていなかったためにあっさりと白濁を放った。相手の膣からぐぷりと溢れる様は見ていて嫌悪感を覚えこそすれ、気持ちがそれ以上高揚する要因とはならなかった。
     
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