「…。」

「…。」

見つめ合う事数秒。次の瞬間、瀬名先輩はぐっと眉間に皺を寄せた。鳴上くんはあらあら、と言いたげに困った顔をした。

「あんた…。」

本日は休日である。私は作っていた衣装の材料が足りなくなった為外出をしていた。すぐ帰る予定だったので学校指定ジャージに上着を羽織っているだけの格好で「これは知り合いに会えないぞ」なんて内心笑っていた矢先のことであった。先輩と鳴上くんはモデルの仕事終わりだろうかきっちりとした格好で私の前に立っている。立っているだけで絵になる二人だな。自分の格好と比べて非常にいたたまれない気持ちになる。

「あんた休日もそんな格好なわけ?」

「は、はは。」

「ダメじゃない、外に出るならメイクちゃんとしないと!まさかとは思うけど日焼け止めは、」

「…。塗ってません。」

ひどい圧を感じた。

「泉ちゃん…。」

「わかってる。」

がし、と両腕を掴まれた私はそのまま引きずられていく。ジャージの女がきれいな格好の男の子に両脇を固められるのは不思議な光景だろう。

「この子は意外とフェミニン系のお洋服が似合うと思うの。」

「はあ?なるくん頭おかしいの?こいつにそんなの似合うわけないでしょ。絶対、カジュアル系。」

「いや、あの、なに…。」

頭上で繰り広げられる会話に不穏しか感じず焦っているとジロリと先輩が私を睨む。蛇に睨まれている蛙の気持ちしかわからない私は心の中で「なんでこんな顔怖いの!?」と震え上がった。

「あんたのそのダッサイ格好をどっちがどうにかできるか勝負するに決まってるでしょ!ていうかいつまで引っ張られてんの?自分で歩いてくれない?」

「ひえ〜、理不尽…。」

「ごめんね、ちょっとお姉ちゃんたちに付き合ってね。うふふ、可愛くしてあげるっ!」

そんなことを言いながらバチバチと火花を散らすのを見て家に置いてきた衣装に思いを馳せた。