「あっづ〜……、」

ベタりと机に額をくっつけるとほんの少しの冷を感じる。それは直ぐに生ぬるい温度に変わると私を苦しめた。あ〜、ドラ*もん〜、今すぐどこでもドアで私を北極に連れて行っておくれよお。

「僭越ながら申し上げますね。南極の方が寒いんですよ。」

「へえ、また1つ賢くなったわ。」

「賢く…、ご冗談を。」

ちら、と伏見くんを見るとニコリ、とアホみたいに綺麗な笑顔を私に向けた。酷く他人行儀でいっそ清々しいものだ。

「ワタシ、カシコク、ナッタ」

「日本語でしょうか?」

私の言葉にやんわりと突っかかってくる隣の席の男はなに!私はこんなに熱い思いをしてると言うのに涼しい顔してバカ!私はイライラと消しカスをこねた。今度こそ眉間に当てて「ぷぷ、ださあ。」と笑ってやるんだから。

「そちらあまりこねない方がよろしいかと。貴女のその、言いづらいのですが手垢などが……。」

「うざあ……。いつか命中させるから顔でも洗って待ってて。」

「首でございます。」

「きぃ〜〜〜っ!!!」

ここは動物園ではありませんよ、なんて言われた私は完成した消しカス爆弾を伏見くんに発射した。くらえ。
さっと手の甲で払われた消しカス達は大神くんの元へ飛んで行った。

「おい!てめ〜!いつまでも小学生してんじゃね〜ぞ!」

後ろから飛んできた野次に平謝りすると伏見くんに思いつく限りの呪詛を唱える。もちろん、心の中で。将来禿げますように。

「はあ、伏見くんのせいで酷い目にあったわ。将来伏見くんが禿げますように。神様よろしくお願いします。」

「そのままお返し致しますね。」

はあ、と私は再度机に額をぶつける。余談だが私は伏見弓弦くんはよく隣の席になる。それはそれは恐ろしい確率で。今回の席替えこそは衣更くんもしくは影片くんの隣になりたいと念を込めて引くというのに彼らは隣にはならない。前後に配置されるか遠くの席に行ってしまう。そして高確率で私の横にはこの涼しい顔した男が座るのだ。憎たらしい。

「伏見くん、私の事嫌いでしょう。」

「そう見えますか?」

え〜?と伏見くんの顔を見れずに顔を反対側に逸らした。私の様子に再び小さな声を漏らして笑うのが聞こえる。

「嫌いではありませんよ。そもそも嫌いでしたら声をかけることも無いでしょう。」

「……無理すんなよ…。」

「無理、ですか?」

「気を使わなくていいからってことよ!」

いいからいいからと手で制すると視界に伏見くんが目に入る。普段は貼り付けたように優しい目元の伏見くんの目がす、と鋭く私を捉えていた。ころされる!咄嗟に窓に顔を戻す。バクバクと心臓がなった。なるほど、嫌いではないというかもうころしてやりたいぐらい!みたいな感じなのね!?呼吸を乱しながら私は次の席替えがやって来ることを祈るほかなかった。