「やあ。」
「おげ、」
私は抱えていたファイルをしっかりと抱え直すと金色に輝く美しい髪を持つ生徒会長様に向き直った。
「この間は時間をとらせて申し訳なかったね。創くんから僕達の招待状、届いたかな?」
「あ〜、ごほん。ええ、あのまあ。貰いました。でも生憎その日はもう別のユニットと約束しちゃっているんですよね。はは、残念だなあ〜。」
いやはや残念残念!と私はゆっくり後退していく。どん、と誰かに当たってしまい謝ろうと振り返った、つもりだった。がっちりと肩を掴まれて動けない。
「どこ行くの?」
のっそりとした艶のある声にしまったと眉を寄せる。朔間凛月…!
「やっほ〜、なになに、俺達のお茶会の日別の予定があるって?ふぅん、どこのユニット。教えてよ。」
「…………、」
嘘である。ユニットとの約束なんてものはなかった。その日は何も無い日だったがあの胃が痛む空間に行きたい!と思えなかったのだ。
「なんで言わないといけないの。やだよ。言わないよ。」
「エッちゃん、こいつ嘘ついてるよ。」
「そのようだね。挙動不審で見ていられないよ。嘘をつく時はもう少し賢くやることをおすすめしよう。」
「…………、」
前も後ろにも逃げ場がない。困った。私史上最高に困った。
「あれ?皆さん、集まって何してるんですか?」
横から入ってきた声に一同顔を向ける。ふわふわと髪をなびかせて丸い目を優しく細めてこちらにやってくる紫之くんだった。
「やっほ〜、は〜くん。」
「こんにちは。ええと、凛月先輩と、会長さんと…?」
「紫之くん、こんにちは。」
助けてくれ、と朔間くんがガッツリ掴んでいる手を指さすが紫之くんはそれに気が付かずニコニコと寄ってくる。
「創くん、この間君に頼んだ招待状の件だけど、彼女来れないそうだよ。残念だね。」
「そうそう、なんだっけ〜?なんか知らないけど来れないらしいよ。ねえ、理由、なんだっけ?」
え!と紫之くんは私を見ると困ったように眉尻を下げる。
「も、もしかしてめいわ…」
「迷惑じゃなかったからね!?いやほんとスケジュール的にキツイかな〜なんて思ってたんだけど空いてたよその日!ユニットの練習あったかなって勘違いしてたみたいほんとほんと、紫乃く〜ん!そんな顔しないで!いやあ、楽しみだな!ははは、」
いつの間にか緩んでいた朔間くんの腕からすり抜けると私は紫乃くんの前に飛び出て早口で捲し立てていた。紫乃くんはぱあっと明るい顔になり「僕も楽しみにしてますねっ」と去っていく。はあ、と額を拭うとどっかりと背中に何かが乗った。
「いやあ、楽しみだね。本当に。」
胃がキリキリと痛んだ。