※視点コロコロ変わります

1.朱桜司の話
転校生のお姉様方は正反対だ。いつも冷静で企画力もあるあんずお姉様と少し自信なさげにしている衣装作りが得意な名前お姉様。私はどちらも素敵なProducerだと思っている。特に名前お姉様の衣装は動きやすくて最高のPerformanceができるのです。いい意味でBalanceの取れたお2人のLessonはそれぞれの観点から指摘をしてくださるのでとても参考になります。
そう言えば最近、瀬名先輩の様子が何やらおかしいのです。例えば、名前お姉様のLessonの時だけイライラとしていて、そう、機嫌が悪くなってしまいます。それなのにちらちらと名前お姉様の様子を伺ってもいるようで何がしたいのか全く理解ができないです。ただ、あんずお姉様の時にはそういうことはなく進行は常にSmoothなのだ。私から見ていても瀬名先輩はお姉様への当たりが強く、それもあってかお姉様はLessonに来てくださらなくなりました。
…全く!瀬名先輩は仕方のない人ですね!


2.鳴上嵐の話
モデル時代から長〜く一緒にいるから分かることだけど泉ちゃんは名前ちゃんにそれはもうあからさまに恋をした。きっかけは名前ちゃんが放ったほんの些細な一言。泉ちゃんの単純さというかなんというかこっちが驚くぐらいだったけど本人は自覚なしなので修正が効かないぐらいに関係をこじらせている最中だ。名前ちゃんも最初のうちは一生懸命関係を修復しようと泉ちゃんの機嫌を伺いながらレッスンを進めていたのだけど途中で心が折れてKnightsのスタジオに採寸以外では顔を出さなくなってしまった。名前ちゃんが来なくなった辺りからさらに当たりがきつくなっていったので、どうしようもないわね、と困ってしまう。本人にはキツくするくせに名前ちゃんが他のメンバーの採寸をしているのをイライラそわそわしながら見ているのを少しだけ笑ってしまうのを許して欲しい。はあ、早く気づけばいいのに。でもそれをアタシが教えたところで泉ちゃんは分からないだろう。アタシが協力できるの泉ちゃんが気づいてから。


3.朔間凛月の話
名前が来るといつもと違うぽんこつなセッちゃんが見れるから楽しかった。例えば名前がデザイン画を持ってきた時は近くには寄らず遠くから睨むようにして様子を伺い、名前が出ていってからデザイン画を穴が開くんじゃないかってぐらいに眺める。また、セッちゃんのダンスの動きを名前が褒めた時は狼狽えての反射か憎まれ口が飛び出る、等といった具合である。後悔はしているのか名前がいなくなったあと呆然と床を眺める姿が非常に面白い。
名前はあんずと違って褒め上手だ。あんずが褒めるのが下手って訳ではないけどあんずは表情が読めない分本心が探りづらい。余談だが気配もない。対して名前は表情にでやすい子だった。今褒められてる、とかほんとに感動してる、とか心と表情筋が直結してるんじゃないの?ってぐらいには気持ちがわかりやすい子だった。なので勿論傷付いている、という顔もすぐ分かってしまう。セッちゃんの後悔を煽るには充分だ。
そうそう今度名前の作った衣装をライブで着るんだよね。そう、セッちゃんが名前を好きになっちゃった時のあの衣装。実は例の衣装はとても動きやすくてデザインもいいのでKnightsの普段の衣装と同じぐらいには多用する。俺も名前の作る衣装は好きだ。着心地がいいし、踊りやすいし、デザインのセンスもすごくいい。そんでもって、あの衣装を着る時のセッちゃんの顔が最高に笑えるんだよねぇ。


4.月永レオの話
セナは世界一綺麗だとおれは思っている。あいつは芸術品だ。ガミガミとうるさいがぜーんぶおれ達を思っての事だしあいつなりにKnightsを守ろうとしているのだ。ただ、人によっては誤解をうむ性格をしている。まあ、神様も人類を平等にするために多少のペナルティをセナに与えたということだろう。そんなセナが恋をした!知らなかったあいつの顔がもっと見れてインスピレーションがわく!愛とは素晴らしい!流石にやり過ぎかなとは思うけどあれはセナなりの愛情表現だ。おれには分かる。だから頑張れ、名前!
そんでもって今日は名前の作った衣装でステージに立つ日。セナはあいつの作ったあの衣装がお気に入りで着る時に少しだけ緩んだ顔をする。パフォーマンスもいつもより繊細になるし笑顔も、いつも多いファンサービスもさらに多くなる。うーん、意外とわかりやすい奴なはずなんだけどなあ。名前はなんで気づかないんだろう。不思議だな!


5.瀬名泉の話
ほんっっとにムカつく!あのちんちくりん!モタモタするしちょっと呼ぶと眉をしょげさせて叱られた犬みたいな目でこっちを見るしさあ。俺がいじめてるみたいで気分が悪いったらありゃしない。後輩いびりは趣味だけどあんな全面的に顔に出されるといびりがいが無いのだ。俺にはそんなだってのに、この間もかさくんの採寸の時に胴回りを測ったあとこそこそと話し込んで楽しそうに笑ったり、やたらベタベタするくまくんには笑って対応する。なんなのあれ?イライラする。それでも、あいつの作った衣装はプロに作らせた外注衣装に負けないぐらいにはちゃんとしていた。そこは認める。だけど衣装作りだけが仕事じゃないでしょう?もっと進行の仕方とか勉強しなよね。と、内心文句を言いながら初めてあいつがKnightsに作った衣装に袖を通す。ぴたりと体にフィットするその衣装は何度着ても悔しい事にいいものだった。
ぱちんと袖口を止めた時に周りが少しだけほつれているのを発見して焦る。しまった、どこかにひっかけたっけ。もうそろそろステージに上がる時間だ。どうしようかと困っていると控え室のドアが叩かれた。

「し、失礼します。」

「あれ?名前だ、うっちゅ〜!」

「こんにちは、月永先輩。皆さんの着てる衣装、何回か使ってもらってるみたいなのでほつれとかないかのチェックだけしに来ました。」

タイミングの良さに褒めてやろうかと口を開いたが出てきたのは困ったことに憎まれ口だった。

「はあ?今の時間分かってんの?もうちょっと早く来れたよねえ?」

「う、す、すみません…!」

途端に青ざめ退室しようとするのをなるくんが慌てて引き止める。ここがほつれちゃったの、となるくんが足元を指さしたのを見て、名前はなるくんを椅子に座らせ跪く。時間をちらちらと気にしながら一通り全員分の衣装を見ていくのを俺は見ていた。俺の番になり気まづそうに近寄ってくるが全くこちらを見ない。その態度なんとかならないわけ?と悪態をつきそうになるが今は時間がない。早くして欲しいと腕を突き出せば俺も椅子に座らされ机に腕を置くように言われる。

「先輩の腕疲れちゃうので。」

そう言って針を持つと慎重に布に刺していく。こちらから見ると伏し目がちになっている名前は少しだけ大人っぽく見えた。勿論針を持つ手は小さいし俺が座ってても分かるぐらいには身長も高い方ではない。急に名前がこちらを向いたので思わず息を呑む。

「終わりました…、」

ありがとう、と小さな声で言うと俺は名前に背を向ける形で立ち上がる。俺の視線の先にある大きな姿見に名前が俺を見ている姿がうつっていた。満足そうに頬を緩めている顔は普段見る自信なさげなオドオドしたあいつとは思えなかった。

「先輩の動きが1番しなやかで綺麗だったので細かい動きをした時にその綺麗さに何かを添えられるようなデザインにしたかったんです。」

初めてあった時言われた言葉を思い出す。この衣装は俺の動きを最大に引き出すためのものだ。つまり、この衣装の魅力を伝えられるのも世界には俺しかいない。

「( まあ、そういうのも悪くないよね。)」

くまくんと目が合うとにやにやと意地悪そうな笑みを浮かべられる。

「なに。」

「べつにぃ。」

ふふ、と息を漏らすように笑うと大きく伸びをする。
まあ、見てなよ名前。あんたの衣装は俺がしっかりステージで活かしてくるから。そういう意味を込めて視線を送れば何故か怯えたように何度も頭を下げられる。なにあれ。
とん、と背中を叩かれて横を見れば王様が立っていた。

「セナ、お前が1番綺麗だよ。」

当たり前でしょ、と返せば独特な笑い声をあげる王様。さあ、行こうかと王様が声をかければやはり気持ちは引き締まる。
ほつれていた箇所に少しだけ触れるとファンの歓声の下に飛び出した。