「なんとなく気まずいけど……。お仕事はちゃんとしないとだよね……」
今日も起床時間は6時。
赤司くんと一度も顔を合わせることのないまま朝を迎えた。
怒られた、とか、喧嘩をした、というわけではないけど、今日は豪華な朝食を作って赤司くんに喜んでもらいたいと、昨日からずっと考えていた。
炊き立てご飯に、焼き魚と煮物。お豆腐の味噌汁にほうれん草のおひたし。そして、ふんわりだし巻き卵。ホテルの朝食みたいに素敵なものを赤司くんに食べてもらいたい。そしたらきっと昨日のことなんて忘れていつも通りになれるよね?
「あれ……」
気合を入れて自室を出ると、リビングに明りが点いていることに気が付いた。
昨日消し忘れちゃったかな?
電気代もったいないなぁなんて後悔しながら部屋に入ると、キッチンに立つ赤司くんの姿があった。
「あ、赤司くん?! どうして……っていうか、朝食作りは私の仕事なのでダメですっ……」
「もう終わったからいい」
「え……?」
私の目を見ることなくそう言い放った赤司くんは、スクランブルエッグに焼いたベーコン、サラダが乗った白いお皿を持って私の横を素通りした。
彼がテーブルにお皿を置くのと同時にオーブンが食パンを焼き終えたことを知らせる。
「赤司くん……」
その10分後、私は赤司くんに後れを取るように適当に作った朝食を食べ始めた。けれど、私がテーブルについた途端、赤司くんは食器を下げにキッチンへと行ってしまう。
これは明らかに避けられている……いやいや。赤司くんに限ってそんな子供みたいなことをするわけがない……よね?
そう自分に言い聞かせて、バターがふんわりと香るトーストをかじった。