【06:00 起床】
 お早うございます。今日から使用人としてのお仕事が始まりました。与えられたお仕事はこのお家の炊事洗濯をこなすこと。あ、ちなみに住み込みです。
 こんなに早く起きたのは久しぶりかもしれない。素早く身支度を整えた私は、7時に起きてくるご主人様のために朝食作りを始めた。


【07:00 朝食】
「えっと……、おはようございます、ご主人様?」
「は?」

 欠伸をかみ殺しながらリビングに入ってきた彼は、私の挨拶に眉をひそめた。

「ご主人様だと……?」
「私はあなたに雇われているみたいなのでご主人様かなと……。ダメですか?」
「……。たしかに君を雇ったのは僕だけれど、そういう風に呼ばれたいなんて趣味は持ち合わせていない。僕よりも年上のようだし好きに呼んでくれてかまわないよ」
「はあ……、えっとそれじゃあ……赤司くんで」
「ああ」

 どうでもいいとでも言いたげな表情で赤司くんは頷いた。そして、朝食が並べられた席について箸を手に取る。いただきますと手を合わせるあたり、さすがお坊ちゃま。
 今日作ったのは、焼き魚に味噌汁、小鉢といった定番の和食メニュー。レストランの厨房でバイトしていたこともあって、料理の腕には自信があったりする。

「へえ、驚いた。あまり期待はしていなかったけど、料理の腕は確かみたいだね。これからが楽しみだな」
「あ、ありがとうございます……!」

 まさか褒めてもらえるなんて! 単純だと笑われてしまうかもしれないけど、でもやっぱり嬉しくて、赤司くんに見られない場所で小さくガッツポーズを作った。


【07:45 登校】
「いってらっしゃいませ」
「昨日伝えたと思うけど、帰りは部活で遅くなるから。それじゃ」

 そうそう。昨日もう一つ驚いたことがあって、赤司君は高校一年生だそうです。あの落ち着きようは今の高校生がみんな持っているのか、それとも彼特有のスキルなのかはわからないけど、とにかく赤司くんが高校生というのには驚かされた。
 自らが主将を務めるというバスケ部の朝練があるからと早くに家を出た赤司くんを見送ると、私は自分の学校の準備を始めた。

【08:30 登校】
 今日は1限から講義が入っている。事前に送っておいた荷物から今日の服を選んで身支度を済ませると、私も大学へと向かった。

【17:00 帰宅】
 両手には駅に隣接したデパートで揃えた食材の袋がぶら下がっている。
 せっかく褒めてもらえたのだから夕食も美味しいの作るぞ! なんて気合を入れすぎたのかもしれない。その重さにへとへとになりながら、私は新しい住まいのドアを開けた。

【20:00 帰宅】
「お帰りなさい、赤司くん」
「ただいま」

 誰もが見惚れるほど整った顔に若干の疲労を浮かべながら赤司くんが帰宅した。
 彼が通っている洛山高校バスケ部はとても強いんだと友達から教えてもらったことがある。そこの主将なんだから、疲労の度合いだって想像もつかないものなんだろう。
 それなら、せめて家では疲れをとることに専念できるよう、私がしっかり働かないといけないんだ。そう考えると、より頑張ろうと思えた。
 
「もうご飯にしてもいいですか?」
「ああ……。なんだかいいものだね」
「え?」

机に並べられていくお皿を目を細めて眺めていた赤司くんがぽつりと呟いた。

「帰ってきて温かい食事があるのはとても助かる。それに、今朝の朝食が美味しかったのもあって期待していたんだ」

 年相応とも言える笑顔を見せられて、思わずドキっとしてしまった。
 昨日感じた彼への恐怖は勘違いだったのかもしれない。そんな考えが脳裏をよぎった。

【21:00〜 雑務と自由時間、そして就寝】
 夕食が終わると、私は洗濯や掃除といった家事に取り掛かる。それすら終わってしまえば、自室で大学の課題やったり、明日の朝食のメニュー考えたり。
 私の使用人1日目はこうして幕を閉じた。
 (予想外に、なんて言ったら怒られるかもしれないけど)優しい赤司くんとなら、仕事の期限である彼の高校卒業まで一緒にやっていけるかもしれない。
 家で使っていたよりもずっとふかふかで寝心地の良いベッドに横になりながら、手元にあるノートに明日の朝食メニューを書き出した。

ご主人様の1日
  mokuji  
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -