「私…死んじゃうのかな…」

悲しみとか恐怖が襲い掛かるよりも早く、私の心はひたすら死への虚無感で溢れかえっていた。
サヨナラの言葉の代わりに固く目を閉じたその時、目を閉じていても眩しく感じてしまうほど強い光が私を包み込んだ。それと同時に頬にあたる空気が変わったような気がした。湿っていて微かに草と土の香りがするのだ。それに、何よりも不思議なのは、私にまだ意識が残っているということ。本当ならすでに床に叩き付けられていてもおかしくないはずなのに。
恐る恐る目を開けてみると、どうやら私は階段よりもずっと高い場所から落下しているらしい。これは私が見ている夢なのだろうか。ちらりと下を見ると、まさに私が落ちようとしている場所には2つの人影があった。

「危なーいッ…!!」

ドスン。そんな音が振動として私の身体に響いた。とにかくお尻が痛かったけど、私はまだ生きている。そんな喜びに浸っていると、「お前…何者だ…?」と、不信感を滲ませた冷たい声が地面に座り込む私に向けられた。

「え……?」
「だから、お前は何者だって聞いてんだ。天人なのか?」
「あの…えっと……?」

私に声をかけていたのは、真っ白な髪の毛に、まるで時代劇の登場人物が着ているような変な着物を着た男の人。よく見てみると、彼の顔も衣装もすべて赤黒く汚れている。
男の人の質問に何も答えられずにいると、ヘラリと笑った彼は「まぁ、俺もお前に助けられたから殺しはしねーよ。ソイツ、倒してくれてありがとな」と言って、右手に持っていた刀を鞘へと戻した。その刀が本物なら銃刀法違反じゃ?なんて疑問も浮かんだけれど、それより重要なのは私がへたり込んでいるのは地面の上じゃないということだった。

「ご、ご、こめんなさいっ……!っていうか、何…これ…?人間じゃない……」
「は……?天人を知らねーのか?」
「あまんと…?」
「お前…、ほんとに何者なんだ?」
「私は名字名前っていいます」
「俺ァ坂田銀時、よろしくな…じゃねーよ!一体どこから来たかって訊いてんだ」
「えっと…、私…、確か家の階段から落ちて…それで、光に包まれたと思ったらいきなりここに…。あの、ここって東京のどこかですか…?」
「とうきょう……?」

どうして私はこんなところに居るんでしょう?そう坂田さんに尋ねてみたけど、彼は困ったように肩を竦めただけだった。それに、私が「あまんと」を知らないように、坂田さんも「東京」を知らないと言った。
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