少しでも気を抜いたら倒れてしまうだろうと銀時は肩で息をしながら本能的に感じ取った。
今から30分ほど前、一通りの戦闘を終え野営地に帰ろうとしたところを天人の集団に囲まれてしまった。個々の戦闘能力はたいしたことがなくとも、それが20、30の集団となると圧倒的に分が悪かった。
落とすまいときつく握った刀は刃こぼれが酷く、その戦い方は斬るというよりは引きちぎると表現した方が正しいのかもしれない。
あと数回敵を斬ればこの刀は使えなくなる。今までの経験から客観的に導き出した答えは、すなわち自分の死を示していて、予想されたあっけない幕引きに自然と自嘲の笑みがこぼれた。
「俺はなァ、ここで死ぬわけにはいかねェんだよォォ……!!」
襲い掛かってきた敵に気迫の一太刀を浴びせる。
刀が相手の首筋にめり込むと、真っ赤な血飛沫と共に銀色の光を放つ刀身がくるくると宙を舞った。
「くそっ……、刀が……!」
折れた刀を目で追うよりも早く、新しい敵が自分に向かって襲い掛かってくるのが見えた。刀を失ったのだからその攻撃を防ぐ術はない。
「悪ぃ、名前……」
無意識にあいつの名前を呟いていた。
必ず元の世界に戻してやると言ったのに約束破っちまってごめん。
以前死にそうになった時は後悔をすることがなかった。なのに、今は後悔と謝罪の念でいっぱいだ。
ごめん、名前。
全てを諦めて瞳を閉じた時、遠くから名前が俺の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。