「あれが今の俺達の拠点だ」

私と銀時が出会った場所から30分程歩くと、背の高い草木が生い茂る林の中に、小さな、それもボロボロな小屋がひっそりと建っていた。木造で、もちろん表札なんてものもないから、人が住むために建てられた家というよりは、物置小屋と表現したほうが正しいような気がする。
そういえば、道中で銀時からこの世界の事をいくつか教えてもらった。「天人」といういわば宇宙人が開国を迫ってきたこと、そして、銀時は仲間と共に天人に対する攘夷戦争を行っているのだそうだ。

「ねぇ、俺達ってことは、他にも人が住んでいるの?」
「あぁ。俺以外に3人居る」
「そっか…」

悪い奴らじゃねーから安心しろ。銀時は、そう言葉を付け足しながら、建て付けが悪くギシギシと音を立てる引き戸を開けた。
私は何も言葉にしなかったのに、心の中に隠していた不安をいとも簡単に読み取られてしまった。そんなに弱気な顔をしていたのだろうかと不思議に思っていると、「銀時、遅かったじゃないか」と不満を漏らすような声がして、入口に最も近い部屋から長髪の男の人が顔を出した。

「ん…?その女は一体…?」
「えっと…、初めまして…」
「ま、まさか…!た、大変だ…!銀時が彼女を連れてきたぞォォ…!」
「おいッ、ヅラぁ…!馬鹿なこと言ってんじゃねーよ、バカ!」

勝手に何か勘違いをしているらしいその人は慌てた様子で部屋の中へ姿を消してしまった。そして、銀時は呆れ果てたように大きな溜息を一つ落とすと、私の手を引きながら、「ヅラ」さんが居る部屋に入っていった。

「お、おじゃまします…」

そう言いながら部屋に入ると、そこにはヅラさんの他に2人の男の人がいた。

「銀時。その女、一体どこで拾ってきたんだ?」

そう言ったのは、サラサラしていそうな黒髪に、とても鋭い瞳をした人。私が何者なのか見極めようとする冷たい視線に、自然と身体が強張ってしまう。

「こいつは名字名前。空から落ちてきたんだ」
「へぇ…。お前、ついに脳みそがいかれちまったみてーだなァ」
「いやいや。それが本当なんだなー、高杉くん。俺は空から落ちてきた名前に命を助けられたってわけ」
「おぉ!ちゅーことは、この子は天女様なんじゃな?」
「馬鹿言うんじゃねーよ、坂本。こんなだらし無い格好の天女が居てたまるかっつーの」
「う゛……!」

高杉という名前の人に言われて気付いたが、そういえば私はベッドから飛び出したままの姿だった。だって、着替える暇もなく階段から落ちちゃったんだもんね。返す言葉もなく、恥ずかしさから俯いていると、坂本と呼ばれた人が笑いながら「格好はともかく、顔は天女と言ってもおかしくないと思うんじゃがのー」なんて、さも当たり前のように言うもんだから、また別の意味で恥ずかしくなった。
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