「んじゃあ、今現在わかることを整理してみっと、俺もお前も同じ日本人なんだよな?けど、お前が住んでた『東京』ってのを俺は知らねェ。んで、『江戸』ってのは、名前が来た世界からしたら過去の地名なんだろ?」
「はい…」
「ってことは、名前は未来から来たってことか?」
「あ、でも、私の知ってる地球には『天人』なんていう地球外生命体はやってきてないです」
「あ゛ー。全然意味わかんねェ」
「もしかしたら、同じ地球を舞台にしてはいるけど異なる歴史をたどっている、つまりパラレルワールドって考えたほうが正しいかも…」
「はぁ…?よくわかんねーけど、とにかく名前を元の世界に帰してやりゃぁいいんだろ?」
「まぁ、そういうことです…」

何かに納得したのか、坂田さんは満足げに頷いて立ち上がると「そっちのほうがわかりやすくていい」と言って、同じように座っていた私の手を引いて立ち上がらせた。
坂田さんとお話しているうちにだいぶ時間が経ってしまった。テストはもう始まっているに違いない。ただ、今はそんなことよりも、家に帰る方法を見つけなくちゃ。

「なぁ…、」
「はい…?」
「困ってんだったらよ、取り敢えず俺らの所に来るか…?」
「でも…、」
「遠慮ならいらねーよ?さっきも言ったが、お前は命の恩人だからな。それと、俺の事は銀時で構わねーし、敬語もいらねェ。見たところ、俺達は歳が近いみたいだし」
「えっと、それじゃあ…、ぎ、銀時…」
「ん?」
「私に頼れるのは銀時しかいない…。だから、手を貸して欲しいの。お願いしますッ…!」
「あぁ。一緒に元の世界に帰る方法を見つけようぜ」

ニカって笑った彼の笑顔がすごくすごく眩しかった。いきなり訳のわからない事態が起こって本当はとても混乱していたんだろう。彼の笑顔を見た瞬間、緊張の糸がぷつりと切れて大粒の涙が頬を伝った。これ以上銀時を困らせたくなくて必死に涙を堪えようとしたのに、「今は泣きたいだけ泣いていいんだぜ」と頭を撫でてくれた手の平が胸が締め付けられるくらい温かかったせいで、私はしばらくぶりに声を上げて泣いた。

迷い子の涙
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