「銀時の話によると、名前殿は、この世界と似た別の世界からきたんだな?」
「はい…。おそらくそうだと思います」

私がこちらの世界に来てしまったいきさつをかいつまんで説明すると、ヅラさん…もとい桂さんは、信じられないといった様子で考え込んでいた。飛ばされた私だって、まだ半信半疑なんだから、第三者の桂さんが信じられないのは当然だと思う。

「別の世界から来たことが嘘か本当かはさておき、可愛い女の子が困っちょるんじゃ。わしとしては助けてあげたいと思うのぉ」
「だろ?辰馬にしてはいいこと言うじゃねーか。つーことで、名前はしばらくここで暮らすってことでいいよな?」
「銀時が拾ってきたんだ。てめーがちゃんと面倒を見るんだったら文句はねーよ。ただ、俺ァまだ完全にコイツを信用したわけじゃねェ。怪しい素振りを見せたら、容赦なく殺す」
「っ……!」
「高杉…!あんま名前を怖がらせるんじゃねーよ、馬鹿!」

銀時の隣で正座をしていた私は、高杉さんの言葉にギュッと肩を縮こまらせた。本物の刀を持っている人にそんなこと言われたら、冗談だなんて到底思えない。
坂本さんは「高杉の態度は一種のツンデレじゃき」なんて言って励ましてくれたけれど、いきなり現れた人間を怪しむのは当たり前のこと。だから、すこしでも早く彼らに認めてもらえるように、精一杯私にできることをやらなくっちゃ。

「え、えっと…、桂さん、高杉さん、坂本さん、そして銀時。ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いしますっ…!」

床と額がくっつくくらい頭を下げて挨拶をしたら、何故か彼らが笑いを堪えているような音が聞こえた。恐る恐る顔を上げると、やはり予想通りの表情が目に入った。それも、あの高杉さんまで笑っている…というよりも、どこか呆れているみたい。

「皆さん、ど…どうして笑うんですかっ…?!私、何か変なことしたでしょうか?」
「いや…っハハハ…!だってお前、ふつつか者って…。嫁入りするわけじゃねーんだから。ぶはっ…」
「銀時笑いすぎっ…!もう…!!」
「名前はわしが幸せにしちゃるき!安心せい!」

そう言った坂本さんは、元気づけるように私の背中をバンと叩いた。それはほんのちょっぴり痛かったけど、彼の心遣いが私の心を温めてくれた。

右も左もわからない世界に突然やってきて、本当なら絶望とか悲しみのどん底にいるはずなんだろうけど、今は不思議と明るい気持ちの私がいる。それはきっと、この4人の優しい人達のお陰に違いない。言葉では伝えきれない感謝を胸に、私はこの世界で暮らしていく決心をした。

灯火
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