「見つけた……!」
でこぼこの道を走り続けようやく銀時を見つけたのは、彼がいつも丁寧に手入れをしていた刀が真っ二つに折れ、その一片が夜空に舞った時だった。
刀がなければ銀時が身を守る手段がないのは考えなくてもわかる。
私に何ができるだろう。あれこれ考えてみても、戦えない私が銀時を守れるはずがなかった。このまま銀時を見殺しにしなければならないのかと、私は声もでないままその場に立ち尽くした。
「悪ぃ、名前……」
銀時が私の名を呼ぶのがはっきりと聞こえた。
どうして謝るのだろう。それに、そんな辛そうな顔をしないで。
銀時を死なせたくない。私は無我夢中で銀時の元へ走り出した。
「銀時ぃっ……!!」
考えてみれば私はバカだ。目の前にはギラリと不気味に光る戦斧が私の命を刈り取ろうとしている。
大きな衝撃に私の身体はぐらりと地面に崩れ落ちた。けれど、確かに斬られたはずなのに、これっぽっちも痛くない。というか血すら出ていない。
「あれ……? 死んで、ない……」
「名前……? お前、どうしてこんなことしたんだ馬鹿ッ……!」
横たわる私の身体を抱き上げた銀時は、ものすごい形相でこちらを見ている。
銀時は怒っているけど、私は銀時が生きていることが嬉しくてふにゃりと笑みがこぼれた。私にとって銀時は失いたくない大切な存在だったのだと、今更になって確信した。
「銀時、名前殿っ! 無事か?」
「ここは俺らに任せて、てめぇは名前を安全な場所に連れていけ!」
私を追ってきたらしい桂さんと高杉さんが銀時を囲んでいた敵に斬りかかった。
ああ、これで本当に銀時は安全だ。そう思った時、私の身体が淡い光を放っていることに気付いた。よく見ると、頭上にかざした手の向こう側に月が透けて見えている。
「これって、元の世界に戻ろうとしてる……のかな?」
銀時に抱かれながら、私はうわ言のように呟いた。
「あはは……なんかね、いざ帰るとなるとちょっと寂しい、かも……。ねぇ、銀時は? 寂しい?」
「っ……、当たり前だろーが」
銀時が泣きそうな顔で私の身体をきつく抱きしめた。
この世界から消えかかっているせいなのか、ちゃんと抱き締められているはずなのにその温もりが感じられなかった。
最後に銀時を感じたかった、なんて欲張りかな。
「お前に二度も命救われて、そのお返しもできないままいなくなっちまうなんてズルいじゃねーか……」
「お返しなんていらないよ……。銀時はいつも私に優しくしてくれて、それだけで十分幸せだったもん」
へらりと笑って見せても、銀時は笑ってくれなかった。ふと銀時の瞳を覗き込むと、そこに映る私の顔だって銀時と同じくらい辛そうだった。
「一緒にいることはできなかったけど、最後に銀時を守れてよかった……かな」
「名前……、名前っ……!」
「今までありがとう、銀時。私もね銀時のことがだいす――」
だいすき