陽が暮れ始めると、戦いに出ていた人たちが続々と野営地に戻ってきていた。
ここに帰ってくる人で無傷の人なんて一人もいない。そのため、昼間もそれなりに忙しいと感じていたが、夕方以降の忙しさはその比ではなかった。
ようやく怪我人全員の処置を終えると、すでに辺りは真っ暗。野営地内では、戦いの興奮が冷めない集団が大声で騒ぎ立てる声や、今後の戦況について眉を寄せて話し合う声がそこかしこから聞こえてきた。
「桂さん……」
「おお、名前殿か」
昼間の高杉さんの言葉がずっと気になっていた私は情報を得る為に桂さんを探した。
広い野営地でようやく見つけた桂さんは、指導者的な立場にあるのではないかと感じられるやや年配のおじさんと話しこんでいた。申し訳ないと思いつつも背後から声をかけると、彼は話を切り上げて私の方へ駆け寄ってきてくれた。
「お取り込み中申し訳ありません」
「いや、別にかまわない。それで俺に何か用事か?」
「用事、というか銀時のことなんです」
銀時、という言葉を出した途端、桂さんの表情が曇る。私はやはり銀時に何かあったのだと確信した。
「私は負傷した方の治療のお手伝いをしていて、ここに帰ってきた方は全員診たはずなんです。それなのに、銀時の姿はどこにもなくて……。桂さんは何か事情を知っていますか?」
桂さんは一瞬だけ躊躇うように視線を泳がせたが、隠すことはできないと悟ったのか「深刻に考えないで欲しいのだが」という前置きをつけて私に話を聞かせてくれた。
ただいまが聞こえない
銀時がどこにもいないらしい。
根拠はないけれど、私には銀時の居場所がわかる気がした。
だから私は桂さんの制止も聞かずに野営地を飛び出した。