「あーーー。駄目だぁーー!」

先程までよじ登っては飛び降りていた岩にもたれて体育座りをしていると、若干傾きかけてオレンジ色になった夕日が、まるで嘲笑うみたいに私を照らしていた。なんだか、烏の鳴き声まで私を馬鹿にしているように聴こえるんだから困る。

「実際、ばかなんだから仕方ねェんじゃねーの?」
「えっ……?」

人間の気配なんて感じなかったのに、突然聞こえてきた誰かの声。まさかお化けなんじゃないかってドキドキを抑えながらゆっくりと顔を上げた。

「高杉さん…!どうしてこんな所に…っていうよりも、人の心の中を覗き込まないで下さい!」
「ククッ…」

もう、と呟きながらムスっとした表情を見せても、高杉さんは相変わらずニヤニヤ笑ったままだった。それどころか、腰にあった刀を地面に置いて、私の隣に座り込んだ。

「お前、アレ何回繰り返したんだ?」
「も、もしかして飛び降りるところを見てたんですか…?」
「さぁ…。どうだろうなァ」

高杉さんは「見た」とも「見てない」とも言わなかったけど、口元に浮かべた妖しい笑みから考えるに100%見られたに違いない。
自嘲気味に溜息をつくと、私は「21回です」と投げやりに答えた。

「へぇ…。1回で諦めねェとはなかなか根性あんじゃねーか。ただ、お前がここに居るってことは失敗だったんだろうがな」
「はい………」
「ったく…。そんな顔すんじゃねェ」
「うわぁっ……!」

しょんぼりした私を呆れたように見た高杉さんは、大きな手の平でわしゃわしゃと私の頭を撫でた。ぐらぐらと揺れる視界で捉えた彼は普段よりもずっと柔らかい表情をしていたような気がした。
高杉さんだけはなんだか怖くて近寄り難いような気がしていたけれど、やっぱり他の3人と同じように優しい人に違いない。
そんな確信が顔に浮かんでしまっていたのか、「何ニヤニヤしてんだ?」と訝しげに眉をひそめた高杉さんに、今度はこつんと頭を叩かれた。また怒られる、と思ったけれど、彼の口から出てきたのは「帰るぞ」の一言だけ。
差し出された手に掴まって立ち上がると、私は口元に笑みを作りながら高杉さんを見上げた。

「えへへ。高杉さんって実は優しいんですね。なんだか見直しちゃいました」
「あぁ?阿保かてめぇは。別に俺が心配したわけじゃねーよ。お前がンな顔してっと、後で銀時に俺が何かしたんじゃねーかって文句言われちまうからな」
「銀時が……?」
「ククッ…。名前はわからなくていいんだ」
「……?」

意味深な笑みとは、今の高杉さんのことを指すのだろう。何となくこれ以上問い掛けるのは躊躇われたから、私は口を閉ざして悠々と前を歩く高杉さんの背中を追い掛けた。

見つからない帰り道、見つけた優しさ
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