「これで2学期最後のホームルームは終わりだー」

教壇に立った銀八先生がそう言った途端にクラス全体がガヤガヤとうるさくなってしまった。「受験控えてるやつは体調管理には十分気をつけろよ」なんて、先生にしては珍しい気遣いの言葉をちゃんと聞いた生徒はごく僅かなのではないかと思う。先生自身も、これ以上何かを言っても聞いている生徒はいないと悟ったらしく、困ったように笑いながらネクタイの結び目を若干緩ませると、そのまま教室を後にした。
私はどうやって冬休みを過ごそう。鞄に教科書をしまいながらそんなことを考えていると、誰かが私の肩をポンと叩いた。たぶん神楽ちゃんかお妙ちゃんだろうな、なんて期待は大きく裏切られて、振り返った先に居たのは土方くんだった。

「ひ、土方くんっ…!」
「悪ィ、驚かせちまったか?」
「う、ううん!そんなことないよ…!」

ドキドキして心臓が破裂しちゃいそう、なんて本当のことを言えるはずがない。顔に出てしまいそうな動揺を笑顔で必死に隠すと、私は「どうしたの?」と首を傾げた。

「冬休みに初詣…、一緒に行かねーか?」
「え…、初詣…?私と土方くん二人で…?」

彼の言葉の内容を一瞬で理解できず、ポカンと間抜けな表情を見せてしまっていたのか、土方くんはちょっぴり戸惑ったような顔をして「無理にとは言わねーが…」と言葉を付け足した。

「い、行く…!一緒に行きたいっ…!」

勢い余って返事のボリュームが大きくなってしまった。やばい、変な人って思われたかも。でも、そんな心配を吹き飛ばすように土方くんは優しく笑ってくれた。

「それじゃ、場所とか時間は後でメールすっから」
「うん。楽しみにしてるね」
「あぁ、俺も。じゃあな、名前」

突然のお誘いに思考回路は停止寸前。一緒に帰ろうと誘えば良かった、と気付いたのは彼の背中が見えなくなってからだった。ちょっと残念な気もしたけど、それをかき消してしまうくらいの大きな喜びが頭のてっぺんから、低気温で冷えた爪先まで、全身を駆け巡った。
ドキドキして、ワクワクして、落ち着いてなんかいられない。スキップしてしまいそうになるのを抑えつつ、私は神楽ちゃんとお妙ちゃんに「一緒に帰ろう」と普段よりも元気な声で話し掛けた。

スノーエンジェル
身体から翼が生えて、このまま天に昇ってしまいそう
  mokuji  
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