「とりあえず…、ここに居りゃあ大丈夫だろ」 「ありがとう…ございます…。えっとここは…?」 「俺の家。あ、その辺テキトーに座っていいから」 街で出合った万事屋を名乗る男性に腕を引かれて連れてこられた一軒家の2階。やけに広いリビングに案内されて、私は向かい合ったソファーの片方に腰をかけた。 「俺ァ、坂田銀時。んで、さっきも言ったが、頼まれれば何でもやる仕事をしてる。お姉さん、名前は…?」 「なまえ…です…。」 名字を言ってしまうといろいろと面倒臭そうなので、ここは名前だけを教えることにしよう。そう思って名前を伝えると「なまえ…、ね」と呟いた坂田さんは私とは反対側のソファーに座りながら「さっきは誰に追われてたんだ?」と気怠そうに質問をした。 「えっと…、真選組……?」 「え……?ちょ、銀さん…かなりヤバい人を助けちゃった…?」 サァっと顔面蒼白になってしまった坂田さんはかなり動揺しているようだった。何か勘違いをされても困るので「違うんです…!」と慌てて声をかけると、坂田さんは真っ青な顔をヌッとこちらに向けて言葉の続きを待っているようだった。 「犯罪者とかじゃないです、私…!真選組の身辺警護の条件つきで初めて江戸の街の散策に来て、でもやっぱり一人で街を見たくて…その…、」 「あー、つまり脱走ってワケ」 「う……、」 脱走だろ?と言われてしまえば確かにその通りで否定ができない。返事に困ってしまい爪先を見つめていると、坂田さんは、ふぅと息を吐いて立ち上がった。その音につられるように私が顔を上げると、彼は「んじゃ、行きますか」と私の手を引いた。 「あの…!私、まだ家に帰りたくないんです…」 「ちげーよ」 「え…?」 「江戸、見てぇんだろ?」 疑問を浮かべるように首を傾げて坂田さんを見上げると、彼はニッと笑って私の頭に大きな手を置きながら「銀さんとデートしようぜ?」と言った。 |