モノクロ世界 | ナノ

あれから30分。ショッピングモールを抜け出したのはいいものの道なんてわかるはずもなく、私はひたすら知らない江戸の町を彷徨っていた。
考えてみれば、ただ自由に街を見たいと思っていただけで、具体的に何をしたいのか考えた事など一度もなかったのだ。キョロキョロと辺りを見回してみるが、それで何か目的が見つかるわけでもない。

「あッ……!」

やや離れた所から聞こえたのはパトカーのサイレン。もしかすると2人かもしれないと思うだけで、私は無我夢中で走り出していた。せっかく一人になれたのだから、何もしないまま連れ戻されるわけにはいかないのだ。無情な機械音はどんどんこちらに近づいてくるのに、私はただ焦りだけが増すばかりで肝心の足が思うように動いてくれなかった。

「きゃッ…!ご、ごめんなさい!!」
「ッて〜…。おい、大丈夫か…?」

後ろにばかりに注意を向けていたせいで、いきなり曲がり角の影から現れた人に気付けず、そのまま勢いよくぶつかってしまったようだ。地面に落ちてしまったコンビニのビニール袋を拾いながら真っ白な髪の毛をボリボリと掻いた男の人は「あー…、俺も悪かったから気にしなくていい」と呟きながらこちらに視線を向けたのだが、私の表情を見て何か思ったのかニヤリと笑顔を見せた。

「もしかして、お姉さん何かお困り?」
「は…?」
「俺さ、頼まれれば何でもやる万事屋やってんだけど…」

何でも…?と呟いて、私は目の前の男の人を見上げた。ピラリと小さな名刺を差し出されたのだが、私はその文字を読むこともなく彼の手を握って仕事を依頼した。

曲がり角の出会い


「追われているんです!助けて下さい!」
「え…?あ、いや…。追われてるって…何?お姉さん、かなりヤバい感じ?」
「と、とにかく逃げなきゃ行けないんです…!お願いしますッ…!」
「あー…、クソっ…!んじゃあ、こっちだっ…!」

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