最近、困ったお客さんがいて、それが私の悩みの種になっている。

そのお客さんが初めて来店したのは、確か3ヶ月くらい前。一日に何百人ものお客さんを相手にするから、よほどの常連さんじゃない限り、その顔を覚えたりしない。だけど、その人だけはたった一度の来店で覚えてしまった。見た目は普通の男の人。ちょっと変わった所といえば、肌がすごく白くて、晴れているというのに大きな傘をさしていたっけ。なんで、その人の事を覚えたかと言うと、私のお店自慢のお団子を一度に50本も買っていったから。「どこかへの差し入れですか?」と質問をしたら、名前も知らない彼は吸い込まれそうなほど真っ青な瞳をキョトンと真ん丸にしてから「ちょっと小腹が減ったんだ」と言って笑った。

一度目の出会いはそれで終わり。そして、二度目はお団子を100本、三度目は150本と、どんどんその数は増えていって、出会ってから一ヶ月経ったころからは、「俺のためだけに団子を作ってよ」と言うようになった。
何度思い返しても、やっぱりその言葉の意味がわからない。お団子が美味しいと褒めてもらえるのなら、それはありがたいことだけど、どうして「俺のために」という言葉が出てくるのだろう。今日もまた、例のお客さんがやってくるかもしれないと、ビクビクしているうちに、一日はあっという間に終わってしまった。

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