ぐらり、ぐらり。自分ではなく、晋助に身体を大きく揺さ振られる。快感の苦しみのせいで覆いかぶさる彼から顔を背ける度、もう一度お互いの視線を絡ませようと窘める大きな手が伸びてきた。
緩やかな波のように身体の中から沸き起こる熱い感情。その波は脳みそを甘く痺れさせて、私から出ていく言葉はすべて、熱っぽい吐息に変わってしまう。

「ん…っはぁッ…、う」

脳みその痺れはやがて全身に広がって、開かれた脚も、畳を必死に掴む爪先も、晋助の背中に爪を立てる指先も、小さく震えながら強張っていく。
あぁ、もうダメだって悟った瞬間に晋助は律動止めて私に口づけをした。何度も、何度も、その繰り返し。終わりの見えないことが嬉しくもあるし、もどかしくも感じられた。

「意地悪ね…、晋助は」
「あァ?」
「これじゃあ私…、戦う前に疲れて死んじゃうかもしれないよ?」

晋助はクツクツと喉で笑って、私の口を塞ぐように唇を被せた。私は唇を割って入ってきた舌と自分のそれを緩く絡ませて必死に生暖かい唾液を飲み下す。晋助の唇が離される度、涙が溢れるほど息苦しいのはどうしてだろうか。離れたくないと、脳みそじゃなくて心が晋助を求める。

「明日、他の野郎がてめぇを殺すんなら…、今ここで俺がヤっちまうのも悪くねェ」
「ふふ…。かもしれないね」

悲しい冗談だ。私はそう思って、目を細めながら小さく笑みを浮かべた。いっそのこと、そうしてくれた方が私は幸せかもしれない。ほんの一瞬、別のことを考えていた私に、晋助は触れるだけの口づけを落とすと、「そろそろ終いだ」と呟いた。再び脳みそが徐々に麻痺していく。終わりになんてしたくないのに、嫌だと拒みたいのに、身体は晋助によって終わりへと連れていかれてしまうのだ。もうダメだと感じても、今度は晋助の動きが止まることもなく、口づけもない。
先ほどまで雲に隠されていた月が姿を現したようだ。青白い光の中にうっすらと浮かぶ晋助の姿。それは、まるで晋助が別の世界の人間なんじゃないかと疑問に思うほどに綺麗だった。

「しん…すけッ…、」

私は叫ぶように彼の名前を口にしていたのだと思う。止まらない律動、下腹部の鈍い痛み、晋助の熱い吐息、骨張った手、広い背中、柔らかい髪の毛。そのどれもが息ができなくなるほど愛おしい。私は今、この世界に居て、晋助と生きていると、私の脳みその最も深い所に刻み込まれていく。

「ありが、とう…」

もう身体が終わりを告げている。じわじわと白に埋め尽くされていく思考回路に抗えないまま、私は重たくなった瞼を閉じた。


存在証明
貴方と私の心音が明日、途絶えることありませんように。

Fin.

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