「不動!」

「あ?……何だ、円堂かよ」

「何してるんだ?こんな時間に」

「…別に何でもいいだろ」

「……隣良いか?」

「ダメだっつっても居るんだろ?どーせ、」

「へへへ、まあな!」

「……まあなってお前なあ…」

1日が終わろうとしている時刻、喉が渇いた俺は食堂へと水を飲みにいき、自分の部屋へと帰る途中にふと外を見てみるとグラウンドにあるベンチに腰掛け、夜の空を見上げている特徴的な髪型をしている人物を発見した。

あの髪型は不動だ。そう確信した俺は何だか無性に嬉しくなって、急いで不動の元へと駆け寄り声をかけて、そして今にいたる。

「不動、」

「んだよ」

不動がチームに溶け込み始めて2週間、俺は気が付くといつも不動の傍にいた。

何かあれば不動、不動と不動の後を着いていく俺に、最初はうぜーやら着いてくんな!と罵声を浴せてきた不動だったけど、それでも不動に近付く俺に呆れたのかだんだん何も言わなくなった。それに少しずつだけど、不動は俺に心を開き始めてくれたのか仲良くなれた気がする。

「空、綺麗だなあ…」

「は?」

「ほらあの星なんて掴めそう!」

「……馬鹿じゃねえのお前」

掴める訳ねーだろ、と言う不動はロマンが無いというか何というか。この2週間ずっと不動の傍に居た(後を着いていた)俺は不動の大体の性格を把握した。

まず不動は意外と律儀だ。(失礼かもしれないけど)俺が話かけると最初は嫌々ながらもちゃんと返事をし、無視するということは絶対にしなかった。(今では普通に返事してくれるぜ!)

次に不動は意外と真面目だった。(これも失礼かもしれない)イナズマジャパン内では掃除、洗濯、料理など、選手達が日替わりの当番制でマネージャー達の手伝いをする事があるんだけど、不動は一度もサボった事がない。俺と一緒に買い出しを頼まれた時もちゃんと行ってくれた。それにその時、荷物を俺より重いものを持ってくれて、ぶっきらぼうだけど不動には優しい所があるということを見つけた。

「おい」

「ん?どうした?」

「…お前薄着で寒くないのかよ」

「…んー!大丈夫!……って言いたい所だけど……」

「どっちだよ」

「ぶっちゃけ寒い!」

あ、鼻水が垂れてきた。
ずびずび鼻を鳴らす俺を見た不動は自身が着ていたパーカーを脱ぎ、俺に渡してきた。

「ん、これ着とけ」

「えっ?」

「…お前に風邪惹かれっとこっちが色々と困るからな」

最後に不動は意外と世話焼きだ。これが一番ビックリした。例えばさっきのように俺が寒いと言えば風邪を惹かれるのは困る、と自分の上着を差し出してくれる。他にも俺がご飯食べてる時には口の周りが汚い、とティッシュで拭いてくれるし、勉強で分かんない所があると分かりやすく(そんなのも分かんねえのかよと罵られるが)教えてくれる。

不動って実は優しいんだぜ。

「へへっありがとう不動」

「…別にどうってことねえし」

あっ、不動の奴照れてる。
これも2週間ずっと一緒に居たから分かるんだけどさ、不動は照れると絶対俺の方を見ないし頭を掻く癖がある。
ほら、今も後頭部らへんを掻きながら俺の方を見ようとは絶対にしない。

「不動ってさー実は優しいよな!」

「は、何だよ急に」

「いやー…改めて思ってさ!」

「意味分かんねえ」

一瞬、俺の方をチラリと見たかと思うと今度は目線を上に、空を見上げた。
俺もつられて空を見上げる。

「不動、」

「あ?何だよ?」

「俺さあ、不動と居るとすっげー楽しいんだ」

「……はあ!?」

「毎日俺の知らない不動を発見出来てさ、嬉しくなるし!」

「なっ……!」

真面目な不動、優しい不動、照れてる不動、怒ってる不動、笑った不動……この2週間で色んな不動が発見出来たけど、まだまだ発見しきれてないはず!これからちょっとずつ発見出来るのかなぁ、なんて思うとワクワクする!

「だからさ、不動!」

「……」

「これからもよろしくな!」

にっこり笑いながら言うと、不動は一瞬驚いた顔をして、すぐにバッと思いっきり俺から顔を反らした。

「不動…?」

「おっ、お前がどうしてもって言うんなら…」

よろしくしてやらない事もない。

そう言った不動の言葉が嬉しくて、思わず俺は感動して不動の背中に抱き付いた。

「ふっ不動ーーーっ!!」

「…ぐはっ!」

「仲良くしてくれるんだよなっ!?やった!やった!ありがとな!」

「くっ、苦しいから離せっつの!!」

あっ、不動耳真っ赤。照れてる?と言えば調子に乗んじゃねえ!と頭を叩かれた。痛い…!だけど嬉しいからそんなの気にしない!

「不動っ不動っ!」

「ちょっ、落ち着けよお前!」

「明日もサッカー頑張ろうな!」

「!」

にっこり笑顔で言ったらまた不動に頭を叩かれた。
何で叩くんだよ!と言えば、てめえの笑顔は俺にとっては毒なんだよ!と逆ギレされた。
笑顔に毒なんかある訳ないのに、変な不動。
そのまま不動は宿舎へ足早と帰って行くから俺も慌てて追いかけた。

何で逆ギレされたかイマイチ分かんないけど、これからも不動が仲良くしてくれると思ったら嬉しくて嬉しくて思わず1人でニヤケてしまう。

あれ?俺何でこんなに嬉しいんだろう?

円堂がその気持ちに気付くのはまだまだ先の事である。



優しくてツンデレなひと



(おーい不動待ってくれよー!)
(!お前がトロいんだろ!)
(とか言いながら待ってくれる不動ってやっぱり優しいよな!)
(うっ、うるせー…!)
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