イナズマジャパンとして世界に挑戦している最中にも、俺には普段から日課として続けている事があった。

それは、円堂がケガをしたとき手当てをすることだ。

もともと円堂は昔からドジをしてケガをする事が多かった。それに加え、中学生になってからはむちゃな特訓も始めたりして余計にケガが増えた。
特訓ならまだ良い、それほど頑張っている証拠だからな。だけどアイツは特訓よりも普段のドジさでケガしている方が圧倒的に多かった。(これも昔から)

円堂のドジさはそりゃあもう天下一品のものだ。何もない所で転けるのは当たり前。サッカーのことになると急ぎすぎて足がもつれてずっ転ける。木暮がイタズラで廊下に置いたバナナの皮(不動から貰うらしい)を誰も踏まない中円堂だけは見事に踏んづけて大転倒。代表的なものを挙げてみたが、他にももっと色々ある。それほど円堂はドジなのだ。

そんな事が毎日と言うほど続くので俺のポケットには常に絆創膏やらガーゼやら(消毒液も持っていたいが流石にムリ)が入っていた。円堂がいつ転けても大丈夫なように。

それにケガの手当ては人よりも数段上と言えるほどよくしている。円堂に鍛えられたようなもんだ。まあ、円堂が好きな俺には昔からの特権みたいなやつで。昔から円堂のケガのほとんどは俺が手当てしていると思ったら何だか特別な感じがして嬉しかったし、これからも俺がしてやれるならしてやりたい。

そして今日もまた円堂が転けた。

「えへへ…また転けたや、」
「今日は何をして転けたんだ?」

グラウンドのベンチに円堂を座らせて、俺は救急箱を開けて消毒液とティッシュを取り出す。

前ケガをした時の傷口がようやく塞がれようとしているのに、円堂はまたその上から傷を作っていた。膝には砂がつき、血が滲んでいて、見ていて痛々しい。

「今日はな、」
「うん」
「普通に走ってたらさ、」
「うん」
「足元にボールが転がってきて…」
「それに気付かず転けたって所か?」

うん、そうなんだ、とアハハと笑う円堂の膝に付いている砂をティッシュで丁寧に落とす。

「円堂は本当にドジだな」
「そうかぁ?」
「そうだ」
「えー……」

砂を落としたティッシュをベンチに置き、新しいティッシュに消毒液を垂らして

「ちょっと染みるぞ?」
「慣れてるから大丈…夫って!!痛い痛い痛い!!」
「え?慣れてるから大丈夫なんじゃないのか?」
「不意打ちは無しだろ!!」

円堂の膝に不意打ちでティッシュを宛てるとひーひー言いながら目に涙を浮かべて此方を睨み付ける円堂は全然怖くも何ともない、むしろ可愛い。

「ははっ、悪かった悪かった」
「もう!悪いって思ってないだろ!」
「悪かったって、ほら、もう手当てしたから大丈夫だぞ」

あとは絆創膏を貼るだけ、ポケットから絆創膏を取り出して円堂の膝に丁寧に貼り付けた。

「よし、完成」
「ありがとな風丸!」
「どういたしまして、」

にっこり笑ってお礼を言う円堂に俺も微笑み返した。ついでに"もうドジするなよ"と頭をぽんと撫でてやると、(本当はまたドジしてほしい)ふにゃりと頬を緩ますものだから可愛いくて仕方ない。

暫く俺に撫でられて、気持ち良さそうに目を細めていた円堂だったが、急にジーッと此方を見つめてきた。

「どうした?」
「いつもごめんな、手当てしてくれて」
「何だよ急に、昔からの事じゃないか」
「だからだよ、昔から毎日のようにケガをする俺を呆れずに手当てしてくれるだろ?昔からずっとさ……ごめんな」
「…いや良いって、それくらいどうってことないさ」

いきなり謝られてビックリした。本当にどうしたんだ急に。今まで俺が手当てするのは当たり前だったし、円堂だってケガした時はわざわざ俺の元にきて手当てしてくれって言うし、俺の中では日常的な事になっているもんだから謝られる要素がどこにあるのか分からなかった。

「風丸ってホント優しいよな…」
「そうか?褒めても何も出ないぞ?」
「いや、ホントに昔から優しかった!」
「何だよそれ」

クスクスと笑いながら円堂を見ると頬をピンクに染めながら此方を見て、

「…俺、風丸に手当てして貰うの好きなんだ、」
「へっ?」
「昔からずっとさ、風丸が手当てしてくれるのが嬉しいんだ」
「!」

照れ笑いしながら言う円堂に此方も顔が熱くなっていくのが凄く分かる。

何でこんなにコイツは可愛いんだろうか、目の前にいる円堂が愛しくて仕方ない俺は逸る鼓動を抑えながら言った。

「…円堂、」
「うん?」
「これからもケガしたら俺の所に来るんだぞ」
「…!」
「他の奴の所には行くなよ、俺が手当てしてやるから…」
「…うっ、うん!」

約束、と小指と小指を絡めて笑い合う俺達。そんな小さな事でも、俺にとっては凄く大きい幸せだった。

夕暮れのグラウンド、小さいベンチにて2人だけの約束をした。



2人だけの約束



(もうそろそろ幼馴染みから)
(脱出したいんだけどなぁ、)
(でも今はこれだけでも)
(幸せだから…良いか!)
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