※パラレル
とあるファーストフード店にて。俺はシェイク、円堂は炭酸飲料を片手にいつものようにダラダラと過ごしていたのだが、不意に円堂が真面目な顔になって口を開いた。
「南雲ってさぁ」
「あ?」
「……進路どうすんの?」
「ぶふっ!」
「うわっ!」
ゴホゴホと噎せながらげっと嫌な顔をする円堂を軽く睨み付ける。どうしたんだよ急に。普段サッカーの事しか考えていないような奴が、いきなり真面目な顔で何を言うのかと思えば、柄にもない事を口に出すもんだからめちゃくちゃ驚いた。俺が口に含んでいた少量のシェイクが円堂の制服の袖についているのが、その証拠だ。
「うげー……汚い……」
「お前が柄にもねぇ事言うからだっつの!!」
若干まだ噎せながら、シェイクを吐き出した事を円堂のせいにする。当の本人はと言うと、顔を僅かにしかめながら備え付けについてきたナプキンで制服の袖を拭いていた。
「だってもうこの時期だぜ?」
使い終えたナプキンをくしゃくしゃに丸めながら円堂は言った。
「嫌でも考えるだろ?」
はぁ、と溜め息を吐いて机にうなだれる円堂は余程らしい。サッカー馬鹿にも、悩みがあるんだな。俺も円堂も進学希望の筈だが、何処の大学に行くか迷っているみたいだ。まあ、俺も先週まではそんな感じだったが。何だか元々小柄な円堂が、今はより小さく見えた。
「で、南雲は?」
「は?」
「だ・か・ら!どこに進学希望かって!!」
「あー……一応都内の大学だけど」
俺の言葉を聞いた円堂は、元が丸い目を更にまん丸にさせて驚いていた。んなに驚く事ねぇのにな。俺だって考える時はちゃんと考えたりすんだからさ。ま、決めたのはほんの先週の事だけど。
「そっか、」
「で、お前はどうすんだよ」
まだ残っているシェイクを啜りながら聞く。悩んでいる様子が目に見えるが、一応な。俺のその問に円堂は小さく唸りながら考えていた。俺はその間にズルズルと残り少ないシェイクを味わう。暫くして考えが纏まったのかギュッと唇を結んで、それから円堂は頬を緩めて笑った。
「俺も南雲と一緒の所でいいや、」
「………は、」
「だってやっぱりさ、南雲が居ないと何処の大学でもつまんないし」
ニッと嬉しそうに笑う円堂を目の前に、一瞬頭が回らなかった。何言ってんだコイツ。馬鹿じゃねえの。未だにニコニコ笑う円堂は、本当に大馬鹿野郎だ。だって、いくら仲が良い奴だと言っても、自分の進学希望をソイツが行くからという理由だけで決める奴がいるか?ああ、此処にいたよ。顔が火照って、暑い。
「って訳で勉強とか教えてくれよ南雲!」
とりあえず明日からスパルタでいこうと思う。
赤い顔を隠すように、もう何も入っていない容器をいつまでも吸い続けた。
単純ですね
(お前も俺も)