風に運ばれた桜の花びらが円堂の肩にピタリとくっつく。笑ってそれを取ってやると円堂は少し目元を赤くしたまま、さんきゅ、とはにかんだ。

「卒業、したな」
「ああ、」
「あっという間だったよ」
「毎日楽しかったからな」

本当に、楽しかった。瞼を閉じれば思い浮かぶのは三年間の思い出。中には辛い事や悲しい事も沢山あったが、やっぱり仲間との輝かしい思い出には勝てない。みんなと過ごす日々はキラキラしてて、夢みたいなものだった。

「俺、まだ実感ないんだよ」
「俺も、」
「まだみんなとこのグラウンドで走り回れるって思ってる」
「俺も、」
「部活が終わった後はみんなで雷雷軒に寄ってラーメン食って、」
「円堂と壁山がラーメン大食い対決を始めて、」
「負けて腹がいっぱいで動けない俺を」
「俺が引きずって帰るんだ」

お互い顔を見合わせて笑った。小さく、小さく笑った。円堂の笑顔は懐かしむような、嬉しそうな、少し大人びたものだった。

「寂しいな、」

不意に円堂が小さく呟いた。先程の笑顔とは打って変わって、言葉の通り寂しげな笑顔を浮かべている。収まっていた円堂の瞳は、また潤み始めた。式の途中で号泣してたくせに、何処にまだそんな水分が残ってるんだ。

「泣き虫だな円堂は」
「そういう風丸だって」

ハッとして、自分の頬を触ってみる。確かにそこは俺の涙で濡れていた。

俺だって寂しいんだよ。


ぜんぶきらきら


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