※完全パラレル
※結婚するヒロトと幼なじみな守



生まれた時からずっと一緒にいる幼なじみ、ヒロトの事が気付けばずっと好きだった。

優しい眼差しで俺を見つめるヒロト、薄い唇で弧を描いて笑うヒロト、星が好きで星の事を語る時のヒロトの横顔、全部、全部、気が付いた時には既に好きだったんだ。

でもヒロトには婚約者がいた。相手は財閥の一人娘、親同士が決めた婚約らしい。俺が見かけたその子はとっても可愛らしい女の子で、二人並ぶその姿は絵になるようだった。

ヒロトにお似合いのその子に、俺が叶うはずがない。男の俺が女の子に叶うわけ、ないんだ。

――そう理解した高二の冬。
雪がちらちら降る寒い夜の中、楽しそうに笑う二人に涙しながら痛んだ胸にヒロトへの想いを封印した。



あれから五年。
ヒロトへの想いは高二の冬、あの雪が降る寒い日に封印したのに、とっくの昔に封印した、はずなのに。

何で今さら、お前は、

「ヒロト、こんな時間に俺の家に来ちゃまずいよ、明日はお前の大事な―」
「守、」

ここに来るんだよ。

凛とした穏やかな声で俺の名前を呼ぶヒロトに続きの言葉を遮られる。結婚式前夜にいきなり俺の家に押し掛けてきたヒロトを俺は明日に響くだろうと思い自分の家へ帰らせようとしたが彼の声がそれを許さなかった。

「今日だけ、守、お願い」
「ヒロト、」
「明日から守とはもう会えないから、許して、守」

その言葉に胸がギュッと締め付けられる。ああ、そうだ、明日から会えない、ヒロトとはもう会えないかもしれないんだ。ずっと、ずっと一緒にいたヒロトともう会えない。

明日はヒロトの結婚式で明後日にはもう、全く俺の知らない場所に行くんだから。

結局俺はヒロトを強く追い返せず玄関先に彼を迎え入れた。ここ、座って、と玄関の段差に腰をかけるように促して自分もそこに腰をかける。ありがとう、と微笑むヒロトに鼻の奥がツンとした。

「いよいよ明日…、か、」
「うん、」
「おめでとうヒロト、」

喉から絞り出すように出た言葉は予想以上に小さくなってしまった。ヒロトはと言うとそんな俺に驚いている。そりゃ当たり前か。だって、俺、今さっき初めてヒロトに祝福したもの。結婚を祝ったもの。

「守が、」
「……………」
「まさか守が、ね」
「……………」
「祝ってくれるとは、思わなかった、な」

ありがとう、本日二度目の彼のお礼の言葉は先程と比べて酷く震えていた。

俺、本当はお前におめでとうなんて言うつもりなかったんだ。言うつもりなんて、なかったのに。言いたくなんかなかったのに。

どうして俺は女の子で産まれてこなかったのだろうか、そしたらもう少し違う未来が歩めたかもしれない。あの頃の想いをヒロトに伝えられたかもしれない。おこがましいにもほどがあるけど、もしかしてヒロトと結婚出来たかもしれない。こんな事言ったら母ちゃんにも父ちゃんにも怒られそうだけど、だってそうだろう。実際、ヒロトと結婚出来るのは女の子だけなんだから。あの子だけなんだから。

――あれ、俺、何で、何で、あの時の想いは――ヒロトへの想いは―――

未だにヒロトに対する想いが残っていた自分に驚く訳でも呆れる訳でもなく、ただただ目頭が熱くなった。


やっぱり好きだったよ


―――――――――――――

本当は一話分だったけど、長くなりそうだったので二話分にする事にしました。

続きの二話目はまた後日upしたいと思います。


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