※死ネタ



俺は夢を見ているのだろうか。

真っ暗な場所をただ1人ポツンと立っている俺。当たりを見渡しても誰もいなくて、あるのは一面の闇だけ。怖くなってその暗闇から抜け出したくて、行き先も分からないけどただひたすら前を走った。走ったその先には誰かいるんじゃないかと信じて。走って、走って、走って、ようやく前に誰かが立っているのが見えた。その後ろ姿はよく見るといつも見ている俺の大好きな不動の背中だった。嬉しくて、ホッとした俺は不動に近づいて不動、と呼ぶんだけど全然振り向いてくれないんだ。何で無視するんだと少しムッとした俺はさっきより大きい声で不動、と呼んだ。それでもやっぱり振り向いてくれなくて。おかしいなと思って不動に触れようと不動の肩に手を伸ばしたんだけど俺の手は不動の肩をスルリとすり抜けちゃったんだ。驚いた俺は不動の顔を見ようと不動の前に回り込んだんだ。しかし俺はそこで息を呑んでしまった。……不動が静かに涙を流して泣いていたから。俺、不動の泣いてる所なんて見た事ないからさ、どうしたらいいか分かんなくて。どうしたんだ、って声をかけても無視されるし、手を握って落ち着かせようと思ってもすり抜けちゃうし。もう本当にどうしたらいいか分かんなくなっちゃってさ、俺も泣きそうになったとき、今まで静かにただ涙を流していた不動が"円堂"って俺の名前を呼んだんだ。やっと名前を呼ばれた事がすごい嬉しくて、俺も不動の名前を呼ぼうと口を開こうとしたけど出来なかったんだ。不動が言った言葉に酷く驚いたから。

「何で死んじまったんだよ…!」

そこで気付いたんだ。ああ俺死んだんだって。だからいくら不動の名前を呼んでも気付いてくれなかったんだ。だから不動に触れようとしてもすり抜けちゃったんだ。

ボロボロ涙を流す不動を俺はただ呆然と見つめるしか出来なかった。


君の腕に帰りたい


(もう一度あの腕に包まれたら)
(それだけで俺は幸せなのに)


――――――――――――

補足:円堂くんが死んじゃった直後の実際の不動さんが円堂くんが死んだ直後に見た夢?(死んだ直後の世界?)に出て来た話。
それで円堂くんは自分が死んだんだって理解して泣いてる不動さんに何も出来なくて……って感じ。

補足がないと分かりにくくてすいません(泣)
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