※学パロ



「なぁ、南雲」

ぽかぽかの日差しが照りつけるお昼時。
コンクリートの冷たさと日差しの温かさが調度良く心地良くて。
ふわぁぁぁと大きな欠伸が一つ、んーっと伸びをして声がした方へと顔を向ける。

そこには同じように堅いコンクリートに寝転がる円堂がいて、眠気でぼやけた思考の中であー今こいつと一緒に屋上でサボってんだ、と改めて実感させられ、ちょっぴり優越感を感じた。

「何だよ」
「…空ってでっかいよなー…」
「……はっ!?」

いきなり何を言い出すんだと思わず間抜けな声が出た。

いや、いきなり空ってデカイよなとか当たり前の事言われてもさ、俺もどう反応していいか分かんねえんだけど。

「何だよお前急に…」
「いやー、こーやって見てると改めて思ってさ」

にこにこ笑いながら空を見上げる円堂は正直可愛い。
しかしそんな事が言えない俺はその横顔をジッと見つめながら、んなの当たり前だろバカとしか言うことが出来なかった。

「バカって言うことないだろ!」
「バカはバカだろーがバカ」
「なっまた…!…南雲もバカだろー!?」
「少なくともお前よりはマシ」

うぐっと言葉を詰まらす円堂。
まあ円堂が俺よりバカなのは本当の事だかんな、しょうがねーって。

「ううっ……南雲のバァカ!チューリップ!!」
「!んだとこらッ!!」

うぐぐと悔しそうな顔をした円堂は俺の髪型を見てチューリップとほざきやがった。

チューリップじゃねええぇぇぇ!!!!!!

ムカつくからデコピンをくらわしてやると、痛い!と悲鳴をあげてうっすら涙ぐみながら睨み付けてきた。

言っておくけど全然怖くねえからな?

自分で怖いとでも思ってんだろうけどよ、涙目で全然迫力ねえし。
むしろこれ誘ってんじゃねえの?ってくらい。

小型犬が必死に大型犬を威嚇してるようしか見えなくて、それが何だか可笑しく思えてきた俺はついに、

「……ぷっ」
「!南雲!」
「わっ、わりいわりいっ、いや、お前のっ睨んでる顔っ全然怖くねえ…!ぷぷっ!」
「っ!」

思わず笑ってしまった。

(やべえ、マジやべえ、笑いが止まんねえよ…!)

途中、うるさいッ!と頭を叩かれたけどそれでも笑い続ける俺に腹が立ったのか円堂はもう南雲なんて知らない!とそっぽを向いてしまった。

「えーんど」
「………」
「拗ねんなって」
「……別に拗ねてないもん、」
「拗ねてんだろ?」
「……南雲のバーカ……」

ちらっと俺の方を見た後また口を尖らせてぷいっとそっぽを向く円堂に不謹慎かもしれないけど可愛いと思った。

暫く円堂と呼び続けたが意外と(意外じゃないかもしれないが)頑固な円堂はなかなかこっちを見てくれない。

「守」
「!」

(あっ、やっとこっち見た)

守、そう呼ぶと円堂は肩を大袈裟に揺らし驚いた顔をしてやっとこちらを見た。
いきなり名前で呼ばれてよほどビックリしたんだろう。
俺が名前を呼ぶなんて初めてだからさ、

「なっ、南雲…」

自分で言っておいて言うのもなんだけどよ。
名前を呼ばれて恥ずかしいのか円堂の真っ赤な顔を見てると俺まで恥ずかしくなってきた。

「顔…赤い」
「お前もだろ…」

うわーやべー何なのこれ。
いや、マジで何なのこれ。

(超恥ずかしい…!)

「なっ、何で…名前?」
「知らねーよ!!」

ちょっ恥ずかしいんだから話かけんなよ!
つか、マジ何で俺"守"とか言ってんだよ!

守…?守…、まっまもる…!

(うわああああぁぁああぁあ!!)

「南雲…?」

死にたい、果てしなく死にたい。

顔を赤くさせて髪を掻き毟りながらあーっとかうーっとか唸ってる俺におずおずと円堂が声をかけてきた。

「あっ、あのさ」
「!な、んだよ…!」
「こういう事言うのおかしいかもしんないけどっ……、」

頬をピンクに染めながらもじもじし、言葉をえーっ、と濁らす円堂に歯痒いのと、そんな円堂を見てるとますます恥ずかしくなってきた俺は、早く言えッ!と先を促した。

すると円堂はスーハーと大きく深呼吸をひとつした後、

「俺さ、南雲に呼び捨てされたのすげー嬉しいッ!」

と照れたような、それでも眩しい笑顔で俺に言い放った。

(な、なななな何言ってんだよコイツ!!!!)

恥ずかしさと嬉しさでいっぱいいっぱいな俺にえへへ、と笑う円堂は更なる追い討ちをかけてきた。

「なぁ、今度から晴矢って呼んでいいか?」

俺の事も呼び捨てでよろしく!と目をキラキラ輝かす円堂に誰がイヤだと言うだろうか。

髪と同じくらい顔が真っ赤であろう俺は必死に首を縦に振るしか出来なかった。



それは俺らの特権



(俺とコイツだけの特権)


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