::京天


剣城といるとドキドキする。
何て言うか、大好きなサッカーをしてる時みたいに胸が弾むって言うか。
良く分かんないけど、それでも剣城の傍に居ると俺の心臓がおかしくなるのは事実で、そのたび胸が壊れるんじゃないかと心配になって仕方がない。

「それはね、天馬、剣城に恋してるんだよ」

部活が終わった帰り道。いつも信助と歩く夕暮れに染まった河川敷の道で、最近気になって眠れないほどしょうがなかったこの自分の感情をありのまま信助に話すと、そう返答されたものだから暫く頭が回らなかった。

「こ、い?」
「そう、恋」

やっと思考が回りだしたところで、信助に言われた一言を聞き返すように呟けば、信助は満足そうに笑いながら頷いた。

恋、その言葉を繰り返し口の中で転がしてみる。恋なんて、したこともなければ考えたこともないけど、でも信助に言われた言葉は何故だか俺の胸の中にあったモヤモヤを簡単に取り払ってくれて、少しだけ胸の内がスッキリした。

「恋、かあ……でも、何でそれが恋だって分かるの?」

スッキリしたもののまたふと思い付いた疑問を信助にぶつけると、信助は一瞬驚いたような顔してその後にっこり笑うと、そうか天馬だもんねって……どういう意味なのさ!

「剣城といるとドキドキするんだよね?」

「う、うん」

「じゃあ、剣城が他の人の隣で笑ってたらどう思う?」

「……うーん……、」

普段あんまり笑みを見せる事のない剣城が仮に、仮にキャプテンやら先輩やら同じ一年のみんなの隣で笑っている所を想像する。
すると一瞬の内で俺の胸はギュッと痛んで、何とも言えない複雑な気持ちになった。

「どう?嫌、でしょ?」
「……うん、嫌…かな、」

そう言って俯いていた視線を信助に戻せば、信助は嬉しそうにこちらを見ていて、急に気恥ずかしくなった俺は顔が赤くなるのを感じつつ今度はふいっと視線を逸らすと隣からふふふ、と笑い声が聞こえてきた。

「だから、やっぱり天馬は剣城に恋してるんだよ!」
「……俺が、剣城に、恋……」

やっと俺が剣城に恋をしていると理解すると同時に、ボンッ!と顔が更に赤くなるのが自分でも分かった。

今まで剣城に対して感じていたこの気持ち。傍にいるだけでドキドキするのも、何も会話がなくても一緒にいるだけで楽しいのも、剣城が俺以外の人に笑いかけるのを想像して胸が苦しくなったのも、全部、全部、全部、――剣城の事が好きだったから――。

カアアアとますます顔が赤くなる。ダメ、今の俺の顔、信助に見られたくない!見ないで信助!お願い見ないで!信助には顔が真っ赤な事はとっくにバレバレで意味がないけど、それでも一生懸命両手で顔を覆い隠す。

すると、隣から、

「天馬!僕、応援するからね!」

と信助の明るい声が聞こえ、そよかぜステップの如く今すぐこの場から逃げ出したいと俺は強く思ったのだった。


恋を知ってもいいですか


―――――――――――

初書き京天……!

と言っても京←天ですが京介さん名前しか出てないとかマジありえねぇ…orz

まあ初々しい天馬くん書けたので満足です!今度からもっと頑張ります!!


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