「ん?……はっ、」
「!」

暫く天馬くん女子みたいだな、とか可愛いな、とかそんな事をボーっとしながら考えていると、不意に天馬くんが目を覚ました。天馬くんは寝起きで頭が回らないのか、何で教室で寝ていたのか分からないと言う顔でパニくり始めた。どうやら寝起きは悪くないらしい。

「かっ、狩屋!?」
「ん、おはよ天馬くん」
「うん、おはよう……じゃなくて!」

何で俺此処で寝ちゃってたの!?と騒ぐ天馬くんを横目に俺は帰る準備を始める。いや、何で此処で寝ちゃってたのと言われても、それはコッチが知りたいんだけどさ。暫くうんうん悩んでいた天馬くんが何かを思い出したようにポンと手を叩くのと俺が机の横に掛けてあった鞄を机の上に置いたのはほぼ同時だった。

「そうだ!俺部活が終わってから部室で狩屋の事ちょっと待ってたんだけど狩屋がなかなか来ないから……」
「来ないから?」
「教室で待ってたら狩屋来るかなって思って!」
「そしたら寝ちゃってた訳?」
「うっ、うん」

えへへ、と照れたように笑う天馬くんに呆れつつも内心天馬くんが俺の事を待っててくれた事実が嬉しかったりして。少し熱を帯びた顔を隠すように、止めていた手を動かして再び帰る準備を急いだ。

「天馬くんなかなか起きないから置いて帰ろうかと思ったよ」
「あー……ごめんねっ。俺一回寝たらなかなか起きれなくて……」

やっぱりそうなのか天馬くん。じゃあいつも朝はどうやって起きてんの?と頭に疑問を浮かべていたらどうやら顔に出ていたらしく、そんな俺に天馬くんが「いつもは秋姉に叩き起こされてるんだ」ってほんのり頬を赤く染めながら答えた。ああなるほど。あの優しそうなお姉さん、毎朝天馬くんに苦労してるって訳だ。なかなか起きない天馬くんと、そんな天馬くんに手を焼くお姉さんの朝のやり取りを想像して思わず笑ってしまった。

「何で笑ってるのさ、」
「別にーっ」

ムッと頬を膨らます天馬くんの姿に、俺の中の悪戯心がむくむくと芽生える。ちょっとからかってやろーっと!

「ね、天馬くん」
「なぁに、狩屋」

ムスッとしながらもちゃんと返事をしてくれる天馬くんってほんと可愛いよね。

「天馬くんいびきかいてたよ」
「えっ!?」
「涎も垂らしてたっけなぁ、」
「嘘っ!?」
「スッゴイ変な顔で寝てたし……」
「〜〜っ!狩屋っ!!」

ニヤニヤする俺からの意地悪にとうとう耐えきれなくなった天馬くん。顔を真っ赤にさせて俺の名前を叫んだかと思うと、座っていた俺の席から立ち上がり一歩詰め寄ってきた。ああ面白い。

「冗談だよー天馬くん」
「もう!狩屋の意地悪!」

まあまあ、と宥めるがどうやら天馬くんの怒りは収まらないらしい。プイッとそっぽを向いてしまった天馬くんの機嫌をどうやって直してもらおう。うーんと暫く考えていると、ふと良いことを思い付いた。今度はどんな反応をしてくれるのかなーっ!

「天馬くん、」

語尾にハートが付きそうな声色で呼びかける。そして俺のその声に少し反応した天馬くんの細い腕を引っ張ってグイッと顔を近付けた。

「か、りや?」

目をパチパチさせる天馬くんは、この状況に酷く混乱しているのだろう。だって今、天馬くんと俺は鼻先がぶつかりそうなくらいの距離なのだから。クスクス笑いながら、俺は口を開いた。

「全部、嘘」
「天馬くんの寝顔、可愛かったんだから」

そう言い切った最後には、ニヤリと笑って天馬くんから顔を遠退ける。チラリと表情を伺うと天馬くんは更に顔を真っ赤にして口をパクパクと開閉させていた。

「かっ、かっ、狩屋ッッ!!」
「きゃー天馬くん怖〜い」

我に返った天馬くんはまた叫ぶと、頬を赤く染めたまま睨んできた。また怒らしちゃったみたいだけど全然怖くないよ。ヘラヘラふざけてたら、遂には追い掛けてきた天馬くんから逃げるように教室の中を走り回る。

「からかわないでよ!!」
「からかってなんかないよーっだ」

だって天馬くんが可愛いのは本当の事だもん。俺、何にも悪くないよね?

下校時間がとっくに過ぎているのに関わらず、俺と天馬くんの鬼ごっこが始まった。

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一度寝たらなかなか起きない天馬くんを妄想しつつ、ちょっと意地悪しちゃうマサキが可愛いと思った結果生まれたモノです(笑)


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