今日全ての授業が終わり残すところは放課後の部活のみになったと思った途端、担任から「明日の英語に使う資料を纏めるのを手伝ってほしい」と言われた。は?何で俺な訳?と顔をしかめながら担任を見つめれば「今日の日直は君だろ?」ときょとんとした顔をされた。いや、まあそうだけどさ。どうやらもう一人の日直当番はさっさと帰ったようで、俺しか頼めるヤツがいなかったらしい。くそ、絶対ソイツ逃げたに決まってんだろ!

そんなこんなで俺は不本意ながら、明日の英語に使う資料を纏めるのを資料室で手伝わされる羽目になった訳で。天馬くんと信助くんにその事を伝えてから担任と二人で資料室に向かった。コピーされた何枚かの紙を纏めてはホッチキスで止める作業を何十回も繰り返し、やっと全部の資料を纏め終わった時はもう下校時刻前だった。

「…何でこんな所で寝てんのさ」

結局部活も出来なかったし、明日はいつもより早く朝練に行ってキャプテンに謝る事にしようとさっさと家に帰るため教室に鞄を取りに行くと、俺の席で机に伏せるように寝ているヤツの姿が目に入った。サッカー部のユニフォームを着たまま、気持ち良そうにスヤスヤと寝息を立てるコイツが何故今此処にいるのか見当も付かない。部活はもう、とっくに終わっているはずだ。

「天馬くん、」

寝ている人物の名前を呼んでみるが、全く反応なし。揺さぶってもう一度名前を呼んでみるが、それも全く反応なし。

「………まじで」

何でこんなに起きない訳?どうするものかと思考を巡らせていると、無意識に口から溜め息が零れた。天馬くんって、一度寝たらなかなか起きないタイプなんだ。ふと、お日様園に一緒に住んでいる赤チューリップが頭に思い浮かんだ。わぁ、晴兄と一緒じゃん天馬くん。まあ晴兄の場合は、せっかく人が起こしてやってんのに逆ギレするし寝起きは悪いしの最悪な大人だけど、天馬くんは人柄からしてそんな事はないだろう。……多分。

「てーんーまーくん!」
「んん゙〜〜」

寝る体制を変えた天馬くんは、柔らかい頬を見せつけるように顔を横にして此方へ向けたので、今度は天馬くんの柔らかそうな頬を突っついてみた。案の定プニプニとした弾力があって、それに合わせて微かに眉を寄せる天馬くんが面白くって、ついつい何回も突っついてしまう。

「んっ、かっ…りや?」
「!」

モゴモゴした口調で、けれどもハッキリと俺の名前を呼んだ天馬くん。起きたのかと思い慌ててマシュマロみたいな肌から手を離すと、天馬くんは………

「ん〜〜むにゃむにゃ………」
「………って寝てんのかよ!」

まさか起きてはいなかった天馬くんに、鋭いツッコミを入れると同時に内心ホッとした。プニプニ頬を触り回っていた事がバレた時は、何て言い訳したらいいか分かんないし何より他の部員にバレた時が一番怖い。アイツら……じゃなくて先輩方は天馬くんの事になると途端にトチ狂うから。

「天馬くんってやっぱり睫毛長いんだ」

ふと視線を天馬くんの柔らかい頬から目元へと移してみた。前から天馬くん、女子かよってくらい睫毛が長いと思ってたけど、こんなに近くでマジマジと見るのは初めてだった。何て言うか、すげぇ。俺もそこら辺の女子よりは睫毛長い方だけど、天馬くんばっさばさ。鼻筋も綺麗に通ってるし、唇は今は天馬くんの腕に隠れて見えないけど、普段見ている限りぷっくりしてて苺みたいに可愛らしいし。下手すれば天馬くん、そこら辺の女子より可愛いじゃね?

今は閉じられていて見えない天馬くんの青い瞳だけど、普段それに映えるようにくっきりと縁取られている睫毛をそっと撫でてみた。


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