部活が終わった後のシャワーはやはり気持ちが良い。練習で流した汗と手足に付着した泥を洗い落とせば、それだけ自分が頑張った証拠になるから嬉しいと笑ったいつかの天馬を、剣城は自身の髪からポタポタと滴る雫を眺めながらぼんやりと思い出した。

制服に着替えてからシャワー室を出れば、向かう足はミーティングルームへ一直線。案外長くなってしまったシャワーの時間に、アイツは待ちくたびれているだろうと剣城は少しだけ申し訳なくなった。そんな気持ちと比例するように彼の進む足は徐々に早くなる。

「すまない、待たせた―――は、?」

ミーティングルームのドアが独特の機械音を上げながら開かれていく。全部が開かれる前に謝罪の言葉を口にしながら身体を滑り込ませれば、剣城は自身の目に映ったものに思わず驚きの声が漏れてしまった。

「……松風?」

だってそこには、先にシャワーを浴び終わっていたはずの天馬が、柔らかなソファーに身体を丸めて沈み込み、赤ん坊のようにすやすやと寝息を立てる姿があったのだから。

「おいこら松風」
「………………」
「おいって、」
「…………ぐぅ」
「………はぁ、」

剣城はそんな天馬をゆさゆさと揺さぶって起こそうとするが、彼は微かに身じろぐだけで起きる様子は全くない。やはり待ちくたびれたのだろうか。自分が待たせたのが悪いと分かっているが、口から出た溜め息は重いものだった。

「帰るぞ、松風」

天馬の顔を覗き込みながら頬をペチペチと叩けば、自分が先程使っていたシャンプーの香りが彼の髪からふわりと香ってそれが剣城の鼻腔を擽る。そして今彼の目の前には、薄く開いている天馬の可愛らしい小ぶりな唇。

「んっ、京介……」

ごくん。その愛しい唇から発せられた言葉に、剣城は思わず音を立てながら生唾を飲み下した。
わざとなのか、しかし天馬が寝ているのは目に見える。じゃあ寝たふりなのか?生憎、天馬は嘘を吐くのが誰よりも下手であった。

「っつ……」

自身の顔に熱が集中するのが分かるほど、剣城は天馬の不意打ちにやられてしまっていた。
愛するものがそんな無防備な状態で、寝言なのか自身の名前を呼ぶ姿に、理性を保てる奴がいるだろうか。
少なくとも剣城は寝ている天馬を発見した時から必死に繋ぎ止めていたはずの理性だが、今だんだんと擦り切れていくのが手に取るように分かる。

「……起きろ松風」

じゃないと襲うぞ。
耳元で低くそう囁くが、天馬はやはり擽ったそうに唸るだけ。
そんな天馬にもう理性なんてすっ飛んでしまった剣城は、ソファーに身を沈める彼の上に跨り未だに薄く開かれている唇に、自分の名を可愛く呼ぶ愛しい唇に、自身の唇を重ねた。

「お前が悪いんだぞ天馬、」

天馬が完全に目を覚ますのは、これから5秒後の事である。

自主規制が効かず



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