金と黒のタッグ
貧困の進む現代、国を治めるのは政治という名の絶対的な権力にあった。有力な権力を持つものが政権を握り、国を治めていく。
そんな中、国の方針や治世を乱す者達への対策と作られた所謂"制裁を降す"機関を治安統制省という。その中でも警察、裁判官、自衛隊等と違い、断然的な権力と能力を誇り、唯一武力行使を認められた部署があった。
"国会特殊選抜機構"
世間には知られていない、"裏世界"の制裁を降す部隊。基本的、武器の所持や使用には規律に従う事が原則となっているがこの部隊は違った。表の世界には知られないよう知られる前に、"その存在を消す"事が主な職務とされている。
言わば掃除屋、族に言うマフィアだった。
「だーっ!!疲れたっちゅー話やー」
ツカツカという靴の音が地下独特の響きで近づいていく。白のカッターシャツに黒のスタンダードなズボンを身に纏い乱暴に汗を拭く彼は自室のソファーに身を投げ出した。
「謙也さん・・・また訓練所顔出してきたんすか」
謙也と呼ばれたこの男、フルネームは忍足謙也という。細身に長身な身体に生まれ持った金髪とスカイブルーの瞳。この国では珍しい異質な特徴ではあるが本人は大して気にしていない。この"場所"では、異質な人物だとしても疎まれ珍しく思われる事は少なかった。
向かいに座っている人物は軽くため息をつきながら、休まず手元の器具をカチ、カチと慣れた手つきで組み込んでいる。机に広げられている部品を見れば五、六丁の多種様々な銃だ。手入れをかかさないコイツは随分まめな奴だと謙也は思う。
細身の、謙也程ではないがそこそこ身長もある端麗な顔立ち。立てた黒髪の隙間から見える両耳に付けられた五色のピアスは異様なまでに存在感を示していた。生まれ持ったエメラルドグリーンの瞳は謙也程では無いが珍しいものだった。名前を、財前光という。
「おう、腕が鈍るとアカンからな!」
「アンタがおったら折角の向上心失われるわ」
「国一の銃の使い手サンに言われても説得力あらへんっちゅー話や」
俺は長銃専攻なんすわ、といいながらも今の会話の間に全ての部品が元の形へと姿を変えていた。
(本間器用なやっちゃ)
ポイッと投げられた銃を慣れた手つきで掴み、使い勝手を確認すれば随分と挿弾が楽になったようだ。
「おおきにな、光」
「手入れくらいたまには自分でしてくださいよ」
「んー、気が向いたらな」
光が少し呆れながらも微笑んだ矢先、室内に設置されている連絡回線から伝達音が鳴った。
『電報ナンバー、106200です』
その瞬間、二人とも同時に立ち上がり入口付近に設置されているロッカーへ手をかける。
仕事、だ。
「106・・・特務司令部か、用件は」
『密売者の発覚、及び逃亡により情報一律を奪還せよ、とのことです。場所はスラム北84-003番地点』
「丁度廃棄ホテルのある3番ストリートっすね」
「了解した、直ちに現場に向かい任務にあたる」
準備は既に済んだ。ジャケットを羽織り、武器の確認をして直ぐさま部屋を出る。これが彼等のスタイルだ。
部屋と直結しているエレベーターに乗り込めば、どちらともなく口づけを交わした。
「ヘマせんでくださいよ」
「阿保抜かせ、埃一つ付けんで完璧に熟したるっちゅー話や」
「帰ったらとりあえずセックスしたいんで体力残しといてくださいよ」
「な、な・・・っ!!何言ってんねん阿保っ!!」
「ハイハイ」
夜の街へ、駆け出す
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