そんな日常、君と一緒


「ん、光!メールきたで!」
「宛名は?」
「白石蔵ノ助様!白石からや!」
「うわー、嫌な予感しかせえへんわ」

いつもの休日。冷暖房完備の自室で机の上で静かに座っていた俺の携帯、謙也くんが俺のマウスを握っていない方の手に触れゆさゆさと揺らしてきた。イヤホンを外し、視線をやれば俺が付けた右耳のピアスが緑色にチカチカと光っている。白石さんからメール、一応先輩という事もあるので無視はできないだろう。はあ、と溜め息をついてから謙也くんに読み上げて、と指示をすればニコリと嬉しそうに笑ってからすうっと息を吸った。
まさか・・・


『財前っ!!!今日の約束忘れたとはいわさ・・・っ』
「謙也くんストップ、止め、一時停止!!」


いきなり鼓膜に響いた声、どんだけ自分の携帯に爆音でメッセージ叩きこんだんや・・・。その声は間違いなく白石のものだが、発せられている元は謙也くんの口だ。俺は思わずその口を指で塞いで、制止の指示をかける。途端、謙也くんはピタリと止まって頭にははてなを浮かべていた。流石世界最速、反応速いわ。口がとじたのを確認してから指を離す。ごめんな、と呟いてから頭を撫でてやれば即座に首を横にふられた。

「ええの?まだメール途中やけど。書いた方がええ?」
「おん、そうしてや」

机の上に常に置いてあるペンとメモ帳を謙也くんの前に差し出せば、器用にペンの蓋を外して両腕にペンを抱え、真っ白のメモ帳に前進を使って文字を書き出した。通常サイズのペンはやはり大きいのか少しグラグラと不安な足取りだが表示される字は綺麗で読みやすいものだった。

「はい、これでおわりや!」
「お疲れさん」
「これくらい楽勝やっちゅー話や!」

わきゃわきゃと楽しそうに笑う謙也くんを見ていたら自然と笑みが零れた。癒されるわ、本間・・・。

「で、白石さんはなんの用で・・・」

メモ帳を見ればいつも低い体温が更に下がった気がした。まずい・・・、これは本間アカン。


『財前!今日の約束忘れたとは言わさへんで!2時から部活のミーティングがあるっちゅーメール、昨日も送ったはずやで!!今から30分以内にきいひんと一週間謙也は取り上げや、わかったな!』


「謙也くん!最寄駅の時間帯教えてや!」
「えと、白石の言っとった時間に間に合う電車なら後12分後の2時24分発、6番乗り場やで!」
「6番!?1番遠いとこやないか!!ああっもう本間アカンわ!!謙也くん、出るで!」

適当に身支度を整えて乱暴に荷物を担ぎ、謙也くんだけは優しく捕まえて胸ポケットに入れる。

「待ってや光っ!俺イヤホンもっとらん!俺歌われへん!」
「また俺の耳元で小さく歌ってくれればええから!」
「!!?あれ回りの人の視線が痛くて嫌やああああ」


顔を真っ赤にさせてジタバタする謙也くんをごまかすように、地面を蹴るスピードを上げたのだった。



そんな日常、君と一緒



- 2 -
prev next



TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -