(22/24)
  現在進行形で愛して




なあ、気付いとる?お前の視線はお前が知らん間に沢山の情報を俺に伝えとること。分かりやすいくらいに、俺に電波を発信しとること。白石はそんなん気のせいちゃうか、なんて言っとったけど・・・
少なくとも、俺にはお前の愛が痛いほど伝わるねん


いつもの騒がしい、けれど何気に、といっては失礼かもしれないがこれでも全国レベルなんだと言うことが伝わる真面目な部活の時間。週に一回、体力面と瞬発力に改善の必要な後輩の基礎練にと、白石が組み込んだ6キロのロードワークに付き合いたった今走り終えてきたところだ。
一年は勿論、一年間走り込んだ二年生ですら終盤には息が上がりゴールした頃には誰ひとりとしてしばらく立ち上がる事が出来ない。甲斐性ないなあ、とは思うも苦手なら仕方ないか、と考えを改めて、もうちょい練習メニュー変えた方がええんかな、終わった後にでも白石に相談してみよ。なんて思考を巡らせていれば後ろからぱさり、柔らかいタオルが頭に被せられた。鼻孔を擽るこの臭いに、俺は酷く安心する。


「汗拭かんと、流石の謙也さんでも風邪引きますよ」

くるり、後ろを振り返れば思っていた通りの人物。さっきまで俺の隣を走っていた光が軽く汗を拭きながらスポドリを片手にこちらへ歩いてきた。疲れの色はさっぱり見えへん。やっぱり実力でレギュラー勝ち取っただけの事はあるなあ・・・と天才と呼ばれる裏側の努力にいつも関心する。

「って!流石のってなんやねん!!馬鹿は風邪引かんって言いたいんか!」
「お、珍しく謙也さんが冴えとる。明日雪降るんちゃいますか」
「おま・・・、もっと先輩敬え!!」
「へぇ、折角謙也さんの為にとスポドリ持ってきたったのに、俺のこの行動は先輩を敬ってへんと。ならいらへんっちゅーこと・・・」
「すみません欲しいですいります頂きますごめんなさい」


生意気は常に健在、やはりコイツに口では勝たれへん・・・。大人しく謝罪をすれば、まあ今回は大目にみたりますわーなんて生意気を言われながらスポドリを投げられた。(先輩としてのプライドなんてコイツの前では無意味や!!)
しかし、なんだかんだ言って自分より先に俺に水分補給させるとことか、何もいわずともタオル持ってきてくれる辺り気の利く奴やとおもう。キャップを捻り、そのままグイッと重力に従って喉へ流し込む。器官を通り麗される体細胞に喉がなる。うまい、やっぱり体動かした後のこの瞬間は好きだ。
その終始の光景を、じっと見詰められているのを肌で痛いほど感じて気付かないフリをするように瞼を降ろした。


(あー、またみとる・・・)


ぷは、ペットボトルの半分ほどの水分を残して口を離す。濡れた唇をそのままに視線を彼へと向ければ、酷く欲情した瞳。熱いアツイ真っ直ぐで、突き刺さるんじゃないかと思うくらい、痛い眼差し。この視線に、たまらなく優越感に似た感情を抱いてしまう・・・。

「おおきにな、光」

にこり、柔らかく微笑んで名前を呼べば、驚きもピクリともせず、ただ平静に欲情の色をその瞳の奥に溶かして引かせた。ほんのりと、溶かしきれなかった色が残っているのを俺は知っている。


(それを確認したかった、なんて・・・俺も悪趣味やな・・・・・・)


多少の自己嫌悪を感じて唇を乱暴に拭った。蓋をあけたまま目の前の当人に今飲んだばかりのペットボトルを差し出せば、恰も当然のように掠められ口を付けて飲み干す。
すごいスピードで容器の中の液体は彼の体内へと吸い込まれていく。ゴクリ、上下する喉と、うっすらと汗ばんで肌に張り付くジャージを見れば熱を与えられたようにドクリと胸の奥が高鳴った。




常に俺達は愛を求め求められる事を望んでいる
(誰にも気づかれない"愛してる"の伝え方)


(お互いに欲情を繰り返す)
(ああ、今日はきっと抱かれるのだろう)


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100731







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