「財前、言っとくけどな。謙也はお前が思うよりも遥かにモテとるで?」
絶頂部長があんな事言うからや。いきなりあないな事言われたら誰でも不安にもなるに決まっとる。
それに、あんな奴に言われんでも謙也さんがモテとるの位知っとるわ。外見だけは無駄にカッコエエし、身長も高いし、足も早い、性格は優しくてちょっと阿保な処もあるけどそこが可愛ええし、それに何よりいざとなった時めっちゃ頼りになる・・・。ヒトの事いつも一番に考えてるお人良しのあの人がモテへんはずない。そんなん、片思いの時からしっとったはずや・・・。
「謙也さん・・・」
「どないしたん、光?」
「・・・」
気付けば目の前にいる謙也さんのジャージの裾を掴んでいた。
謙也さんは何時もと変わらない、俺だけに向ける笑顔で振り向いてくれたけど、俺が何時までも何も言わず俯いているから、少し心配になったのかオドオドしながら顔を覗き込んで来た。
アカン、いくら不安だからって部活中に何しとんねん。
俺・・・めっちゃ格好悪い・・・。
「光」
「・・・」
「おいで?」
そういって謙也さんは腕を広げると、俺を優しく包み込んだ。
何やこの人、自分がおいでゆうとるのに謙也さんから抱き着いたらおいで、やないわ・・・。
でも知っとる、俺が素直に甘えられんから、だから、そういう事色々考えて謙也さんから抱きしめてくれたんのも。
ホンマ、普段は嫌っちゅー程鈍感な癖に、こう言うところは鋭いちゅーか。
たまにはえぇやろか・・・。
「ひ、ひかる・・・!?」
「うっさい、すわ・・・」
んな阿保な声出さんといてください、そういって俺は謙也さんの背中に回した腕に力を込めて顔を埋めた。謙也さんの匂いが鼻から全身に行き渡る様で凄く安心できた。あぁ、この人は俺の安定剤やな、何て考えながら。
(見せ示してやろうじゃないか)
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光謙
09/07/28
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