(4/24)
  隣にいるなら何処までも




揺れる、揺れる。同一間隔に、カタン、カタン。ある程度慣れた頃には少し腰周りに疲労がたまって来たように思う。
夕暮れ時、今日は何処か遠くへ、知っている人なんて誰も居ない場所へ出掛けたくなって。唐突な俺の発言にも関わらず、柔らかく笑いながら"ほな、電車でも乗って適当に回るか"と言ってくれた彼は隣ですやすやと寝息を立てていた。


当てもなく、目的地も目的も何もなく、ただ彼と一緒に過ごす事だけは固定して地元を遠ざけていった。無人駅で降りて、その辺ぶらぶらして。重そうな荷物運んどったおばさん見つけて、少しその仕事を手伝ったら"家で取れた野菜"だと言われて夏野菜を貰ったり、その野菜がめちゃくちゃ美味かったり。川で遊んどる子供を見つけて、一緒にザリガニ釣ったり。ザリガキに指挟まれて血い出したり(勿論俺やなくて謙也さんがな)

他愛もない時間を、一緒に過ごした。思った以上に空は蒼くて、高くて。何処か彼を思い浮かべる夏の空は、何処までも澄んでいた。


(トン)


、左肩に少しだけ重みが増す。それと同時に、太陽をいっぱいに浴びた彼の髪が俺の頬を擽った。ふわり、彼の臭いが全身を巡って酷く欲情する。視線だけそちらへ向ければ、案の定寝息はそのままに俺の肩へと身を預ける彼の寝顔があった。
酷く安心した、幸せそうな顔。誰にも見られたくないと、思えばこの車両には既に俺達しか居なくて少しだけ安心する。折角ゆっくりと穏やかに過ごせた今日まで、どす黒い歪んだ愛情を彼へと課したくなかった。
夕日が、彼へと光りを注ぐ。眩しくキラキラ反射する髪に、帰り道に見かけた向日葵を思い出した。思うままに触れて、優しく、優しく撫でれば少し身をずらす彼。本能的にあ、しまった。と思った。


「ん・・・・・・ひ、かる・・・」


身じろぐだけの彼から、思ってもない不意打ちを食らって頭の弦が切れた。

(今日は、健全なお付き合いで過ごそうと思ってたんやけどなあ)(本間、俺を煽るん上手いわあ・・・)(アンタのせいやで、謙也さん・・・)


手を頬に沿え、優しく、優しく撫でる。下へずらして、顎へと添えて、ゆっくりと夕日の方へ上げればうっすらと開く薄くて柔らかい唇。




思うままに舌を捩込んで、乱暴に愛撫するのは、本能のままに。




======================


10/07/28






(  )




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -