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  君から貰う愛で満たして





「光!誕生日、おめでとう・・・!」
日付の変更よりも少し早く聞こえた電話越しのアンタの声よりも、キュッと胸が締め付けられた気がした。

昨日、といっても11時47分なんて深夜に謙也さんから電話かかってきてん。何時もなら寝てる筈で、ましてや電話よりもメール派な彼にとっては珍しくて、なんかあるんやろうなとは感づいてはいたんやけど・・・。
まさか自分の誕生日だったなんては思ってもいなかった。全国大会にムケテの県予選もあって、今年の折角の三連休は大会付けやったからそんなん気にしてる暇もないくらい、テニスに明け暮れとったからなあ・・・。そういえば甥も何処かソワソワしながら、珍しく素直に俺の言うこと聞いとったなあなんて思い出す。大方義姉さんがいらん事いったんやろ、と軽く予想がついて少し眉にしわが寄るのを感じた。

ハッピーバースデー、なんてよく耳にする在り来りな言葉を、無駄に良い発音で聞こえたその声は、勿論下の階で眠っているだろう親よりも誰よりも早く、俺の鼓膜に届いた。まあ、謙也さんの通り名が返って阿多になったんは言うまでもなく、正確には19日の23時59分から20日の0時にかけてのメッセージやった。

そして本日二度目になるお祝いのお言葉。
天気は晴天、風はまあまあ。こんな日はいつものように屋上で二人きりの昼食をとる。いつもなら今日は謙也さんの放送の当番やったから放送室で食うはずやったんやけど、折角の誕生日なんにゆっくり食べれへんやん!!なんて言って当番を交代してもらったらしい。ゆっくり食うも何もアンタいつもゆっくりなんて食いませんやん、なんて生意気は特別言わずにおいた。俺かてこんなわかりやすい謙也さんの行動の意図が分からない訳がない。そう思うと自然と頬が緩んだ、本間アカンわ。どんだけ嬉しいねん、俺。

そして現在、俺の前にはなぜか複雑そうな顔をした謙也さんが、コンビニ袋とバンダナに巻いたお弁当の様な者を俺に差し出していた。既に買ってきていた購買のパンは、胃の中に消えている。しかしこの現状はなんなんや・・・。


「、・・・阿保ですか」
「だ、誰が阿保やねん・・・っ!!」
「いや、お弁当作って来てくれるんはめっちゃ嬉しいですわ・・・でもな、俺そんな大ぐらいやあらへ」
「ちゃうねん!弁当やない!!」

・・・は、?ではこれはなんや。飯食った後やったから渡しにくくて顔歪ませてるんちゃうんか。
ひよこ頭の当人はなぜだかさっきから目を泳がせとる。どないしたんや、本間。こんな時はいつもかわええ事を言ってくれるんやけど、生憎この流れは初めて。どんな言葉が出てくるのか検討がつかへん。

俺が頭で適当に考えをまとめている間にも謙也さんはさっきから、あーだの、うーだのうねっている。ほんのり耳が紅に染まっている事に気付いたとき、視線が交わった。


「ぜんざい、作ってきてん・・・」


ああ、この人はどんだけ俺を喜ばせる何や・・・。



(・・・で、なんで二個あるん?)(いや、手作りやさかいまずかったら嫌やなあ、おもて・・・コンビニでも買ってきてん・・・)(・・・やっぱ阿保ですやろ)(な、なんやて・・・っ!!?)

(謙也さんが目茶苦茶頑張って作ってくれたぜんざい以外、俺の口には合いませんわ)

(阿保は光や・・・)(謙也さんにだけっすわー、とりあえず口移しで・・・)(せめて食べさせろ言えやああああああああっっ!!)



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HAPPY BIRTHDAY!光

10/07/20
10/07/25.加筆修正








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