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  運命を感じられる程に





「「いってらっしゃーい!」」

そんな陽気な声に見送られ、俺は苛立ちを抱えたまま学校へ続く桜並木をズンズンと進んでいった。
つい先日、兄貴が結婚した。相手のひと、つまり俺の義理の姉はそれなりに別嬪さんで社交的やしええ人、兄貴なんぞには勿体ないと思うも別に俺の趣味やないしその辺はどうだってええねん。
気に障ったんは先日の兄貴の発言や。


「一目惚れしたん、俺はあの時運命感じたわ」


一目惚れ?阿保らし、そんなん顔がたまたま自分好みやっただけやん、大事なんは中味やろ、一目惚れとかそんな理由で結婚すんなクソ兄貴。だいたい外見だけで惚れられた奥さんやって可哀相や、第一顔がよくても中味最悪やったらどないすんねん
んな事を考えていたら、どんどん腹立ってきた。別に兄貴がどうなろうと知った話やない、ただ結婚したおかげで何かしら兄貴を立てなきゃいけなくなったのも事実で、俺は家にいてもどこか窮屈な気分やった。嫁さんおるし、下手には動けん。揚げ句の果てに唯一自由な自分の部屋にまでちょくちょくやってくるもんだから気が気でない、ぶっちゃけ全てがストレスでしかない。 ああ、家におりたない。はよ別居しろやクソ兄貴、本間イライラする。
もう学校いくんも怠くなってきたわ、なんて考えてもしゃーない、今日は気分転換に放課後どっか寄り道して帰ろ、なんて思ってた矢先やった。


「うお゛っ!!」
「・・・っ!!」


ドン、と桜並木を抜ける手前でおもいっきり誰かとぶつかった、俺もその誰かも勢いよく後ろへ倒れ込む。痛い、ちゅーか別見渡し悪いところやないのになんで朝っぱらからこけなあかんねん。
ああ最悪や、制服クリーニング出したばっかりやったんにもう汚れてもうた。
誰やぶつかって来た奴前くらい見ろっちゅー話や(俺は悪ないし、ただ普通にあるいとっただけや)、んな事を考えながら、こんな事になった張本人の面を拝もうと視線をあげる。ムカつく顔の奴なら一発殴ったろ、と拳をにぎった。
しかしそこにおったのは・・・

「すまんっ!!俺前に人がおるて気付かんくて・・・!」

キラキラ光る太陽やと思った。
目の前におったのは、ふわふわした金髪の長身の男やった。スカイブルーの瞳は俺を真っすぐ映しとる、まるで夏の太陽と空、眩しいけど目が反らせへん。


(うわ、めっちゃ綺麗・・・)


多分俺より年上、すらっとした体格なのにラインがしっかりしとるし、男の俺でも息を飲むほど、かっこええ。
でも何より俺の気を引いたのは・・・

「大丈夫か?怪我とかしてへん・・・?」

俺のことを心から心配しているようなその表情、差し出された手、髪に絡まった桜の花びら。
そして微かに潤む、瞳。

(めっちゃかわええんやけど・・・っ!!!!)

ドッキューーーーーーーーン!!!!!!ドストライクっちゅー話や!!俺のハートはいとも簡単に打ち抜かれた。
こん人俺の心わしづかみにしよった・・・、アカン胸が苦しい、心拍数が一気に急上昇しよる、爆発しそうや、はち切れてまう!!なんやねんこのキュンは!!こん人の事もっと知りたい、傍にいたい、欲しい・・・
あぁ、そうかこれが・・・

「ほ、本間、あの・・・大丈夫か・・・?」
「あぁ・・・、すんません。大丈夫っすわ、なんともあらへんし。それよりアンタは怪我とかしてへん?大丈夫なん?」
「俺は全然!」
「ならええわ、そんでいきなりでなんやけど・・・」
「・・・?」


「好きです、俺と付き合おてください」


(一目惚れっちゅーやつか)


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09/10/27






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