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  メイド・イン・オレ!




「どや!これが俺の愛の形やっ!!」
赤の他人がこんな言葉を店先で耳にしたらいったいどんな反応をするやろうか・・・当然意味合いが理解できずに不審な目で見られるに決まっとる、いや、現在進行系で見られとる。あぁ、やっぱコイツ等とくるんや無かった・・・既に時遅し、手遅れな状況に俺はたまらず盛大にため息を付いた。

事の発端は部活帰りに立ち寄った、この辺で1番美味いお好み焼き屋。当然毎日の様に行列も出来るし、サービスや人柄だって最高のお気に入りの店や。
今日は部活もはよ終わって久しぶりに家でゆっくりマイブームなヨガ体操出来んなーおもっとったんやけど

「お前あの店のおばちゃんに気に入られとるやん!金ないし一緒来てやー」

仮にも俺らは全国レベルのテニス部員な訳で、それなりにハードな部活を終えたレギュラーが爽やかな笑顔で言うもんか?コイツ本間モンの阿保やな、何て考えている間に気付けば強制連行されていた。ちゅーか金ないんに食いに行くか普通。確かに俺を連れてけばあのおばちゃん毎回割引してくれるけども、おらんかった時や割引してくれへんかった時のとこを考えれば得策やない。 まぁそんな話をしたって阿保なコイツは、たまにはええやん!とこれまた笑顔で返してくるのが目に見えとる。俺は店に着くまでの間謙也に片手を握られ(端から見れば手繋いでるように見えるんやけど)後ろから後輩の視線を痛いほどうけながらこの店へやって来た。

店のど真ん中にある大きめのテーブルに俺達三人は腰をおろして慣れた手つきで一人一個ずつ自分好みのお好み焼きを作っていく。
流石大阪人、他愛もない話で盛り上がりながらも直ぐにテーブルの上にはうまそうなお好み焼きが三つ並んだ。
あぁ、ここまではよかったんや、アイツがでかい声であんな事いわんけりゃこんな事には・・・。

いきなりの発言に、俺達は愚か俺達の周りに座るお客さんも視線を謙也に集めた。そりゃそうやろうな、野郎三人できとるのに愛とか恋とか・・・一般的に考えて変人としか思えへん。
そして鈍感なスピードスターちゃんはそんな痛い視線にすら気付かないで、恋人である財前の反応を今か今かと輝いた瞳で見つめていた。なんこいつ、こう言うキャラやったか?
その財前は今、いつもの無表情とは一変、眉間にシワを寄せながら一点を見て固まっていた。視線の先には、多分謙也の作ったお好み焼き。俺もつられて視線を移す。そして俺もまた財前と同じ顔をすることになる。
そこには「光愛しとるで!」の文字がマヨネーズででかでかとお好み焼き本体様の上にのしかかっていた。

「謙也さん・・・何やってんすか、阿保やろ」
「な・・・っ!!」
「・・・」

ごもっともな意見。財前は軽く溜め息をついた。呆れとるやん、お前パートナーけん未来の旦那さんに呆れられとるやん!
財前の一言に謙也はしょんぼりと頭を下げた、よっぽど自信あったねんな・・・。あー、哀れやな謙也・・・俺はどうすることも出来へんわ・・・、許せ。何とも言えない空気のかな、俺は仕方なしにどうやってこの状況を切り抜けるべきか考えていると、財前が左手にお好み焼き用のへらを掴んだ。そしてそのまま

ズサッ!!!!!!
「あ゛ああああああッ!!!」

勢いよく、謙也の作ったお好み焼きを真っ二つに切り別けた。無表情で。その瞬間謙也の叫び声で再び視線がこちらへ集まる、恥ずかしい・・・。
そんな事とは知らず、謙也は口を開けたまま絶句していた。そりゃそうやろうな、仮にも好きやと伝えたもん目の前で真っ二つにされたんや、それなりにショックを受けるのも分かるが、最終的にこれは食いモンな訳でこれを切らずに胃に納めるのは到底不可能である。コイツ阿保過ぎるやろ。なんか同情すら覚えられる。


絶句させた張本人は、対して気にする様子もなく謙也のお好み焼きをもう半分に切って、それを自分の方の鉄板に移動させた。相変わらず無表情。
パクリ。


「こいつ切ったって俺達の愛は切れないっちゅー話っすわ。それに俺はもう謙也さん自身から愛なんぞ腹一杯もらっとるし」


もぐもぐと食べ続ける財前。謙也は顔を真っ赤にさせて光に飛び付いた。

(おいおい、ここ店先なんやけど)(ちゅーか俺帰ってええかな、いや、帰ろう)


(このバカップルが!!!!)

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09/10/20






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