「どっちがいいかな…」
うーん…と唸りながら鏡の前で手に持っているモノを比べている円堂を見つめながら俺は円堂に見つからないように溜め息をつき目の前にあるクッキーに手を伸ばす。
夏休み真っ最中の8月2日。
平日休日関係なく毎日毎日練習ばかりのサッカー部だが、今日は監督が不在の為何週間ぶりの休みになった。
久しぶりの休みだ。
風丸を連れて駅近くの本屋にでも行こうと考えながら携帯を開くとそこには一件の新着メールが届いていた。
誰からかと思いメールを開いてみればそこには"円堂守"の文字。
「円堂から?」
円堂からメールなんて珍しいなと思いつつメールの内容を読めば、『相談したいことがあるから12時に俺の家にきてくれ!』とのことだ。
もしかしたら次の試合の相談かもしれないと考え『分かった。』とだけ返事をし携帯を閉じながら時計を見れば長針と短針がちょうど重なり合い11の文字を指していた。
(今から身支度を済ませれば12時には十分間に合うな。)
そうして手早く身支度を済ませ円堂の家に向かい、部屋に通されドアを閉め終わるのとほぼ同時に円堂の口から飛び出た言葉に俺はゴーグルに隠された瞳を大きく見開いた。
「いちご柄のパンツと花柄のパンツどっちがいいと思う?」
「………………いちご?」
たっぷりと30秒間思考が停止してやっと絞り出した言葉がこれだった。
何となしにいちごと答えたが何の事か全く分からない。
そして今の俺の顔は相当間抜け面だろう。自分でも分かる。
なんだ、コイツはパンツと言ったのか。パンツがどうした。お前は男だろう。いちごやら花柄やら関係ないじゃないか?
自分でもわけが分からないことを考えていると円堂は「やっぱいちごかな…」とタンスからいちご柄のパンツを取り出した。
いや待て、もう一度言うがお前は男だろう。何故そんな下着を持っている。そしてそんな下着を着けたところで誰が得するというんだ。
いろいろツッコミたいことがありすぎて何から言えばいいのか分からない俺を余所に円堂はどんどん話を進めていく。
思考が現実に追いついていないせいでいろいろと円堂の言葉を聞き流してしまってはいるが今日の夜、豪炎寺の家に泊まりにいくと言ったのは覚えている。
豪炎寺の家は今日、父親も夜勤でいないらしく妹も検査入院。つまり誰も家にはいない。
そんな状況で豪炎寺と円堂は二人きりと言うことは…まぁ…"そういう雰囲気"にはなるだろう。
そして下着の話。ようは世間でいう勝負下着を円堂は選んでいると言うわけか。
だからと言ってお前は女物の下着を穿くのか。そんないちごの柄のふりふりのパンツを。恥はないのかお前は。
「やっぱりいちご柄の方が豪炎寺喜ぶかな…なぁ鬼道?」
「…そんな下着を穿いて恥ずかしくないのか円堂」
「豪炎寺が喜んでくれるなら恥ずかしくなんかないぞ!」
どうやら恋は盲目というのは本当のようでコイツは豪炎寺しか見えていないようだ。(鬼道も穿くか?と言われたがスルーしたと言うのは余談だ)
「どっちがいいかな…やっぱいちごの方が魅了感じるよな…」
こんなことに付き合わせられるんなら円堂の誘いを断って風丸を誘えばよかったと激しく後悔しているがこうなってしまったらどうすることもできない。
(円堂がさっさと下着を選んで豪炎寺の家に行くことを願うしかないな)
未だにどちらにしようか悩んでいる円堂に俺はもう一度深い溜め息をつき二枚目のクッキーに手を伸ばすことにした。
いちごパンツの行方
(なぁ鬼道、いちご柄パンツでいいと思う?)
(知らん)
------------------------
パンツの日なので書いてみた。
鬼道さんパンツパンツ良い過ぎやで…
2011.8.2