「帰るか」

「…うん」


部活が終わった放課後、空はもう星が瞬いている。

本当は一人で帰ろうと思ったんだ。
だからこんな遅くまで残って特訓してたのに。

部室に戻れば豪炎寺がパイプ椅子に腰かけ雑誌を読んでいた。
どうやらオレが戻ってくるのを待っていたみたいだ。


豪炎寺、

と名前を呼べば一瞬オレに視線を向けて「早く着替えろ」そう言ってすぐに雑誌に視線を戻した。

それからお互い無言のままオレは着替えを始める。



休み時間になればお客さんが現れて朝以来豪炎寺と喋っていない。
怒っているわけじゃないし喧嘩をしているわけじゃないけど部活中もなんとなく豪炎寺を避けていた。


ただこのよく分からないもやもやした気持ちにどうしたらいいか分からないだけで。




「ほら」



目の前に差し出された手を見つめ握り返そうか戸惑っているオレの手を豪炎寺は無理やり握り引っ張るように歩きだした。



「………」

「………」



お互い言葉の無い帰り道。

時々豪炎寺の方に視線を向けては逸らし溜め息の繰り返し。




「…豪炎寺」

「なんだ?」



どうして、聞こうと思ったのか分からない。
聞いて傷つくのなんて目に見えているのに。
でも口が勝手に言葉を紡いでいく。



「チョコ、どれだけ貰ったんだ?」

「…」

「やっぱ豪炎寺かっこいいもんな。きっと可愛い子にたくさ、ん…貰ったんだろう…な…」


自分で自分を追い込んで何やってるんだろ。
言葉を口にするたびに目頭が熱くなって心臓がつぶれるぐらいぎゅうっと苦しくなって。
気を抜けば目に溜まっていくそれが溢れだしそうだった。




(最悪だ)




こんなはずじゃなかったのに。






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次で終わります…!
円堂くんただの乙女や…





2011.6.3



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