「豪炎寺、お前にお客さんだぞ」
「…あぁ、すまん円堂」
「ん、行ってらっしゃい」
(これで7人目、か)
教室を出ていく豪炎寺の後ろ姿を見送りながらこっそりと溜め息を一つ。
豪炎寺修也。
雷門中サッカー部のエースストライカーでかっこよく勉強もできてすべてが完璧な男。
そんな彼は俺の恋人、なんだけど…。
「豪炎寺のやつ…羨ましすぎる…!」
「さっきから可愛い子ばっかりじゃねーか」
隣の席から聞こえてくる会話にむっと眉を寄せる。
いつも女の子から人気の豪炎寺。
今日は特にモテモテで。
理由は簡単。だって今日は、
「で、お前はいくつもらったんだよ?」
「俺なんて一つだぜ?しかも母さんから」
「俺もだ。せっかくのバレンタインなんだから可愛い女の子から貰いたいよな!」
女の子が大好きなあの子にチョコを贈る日。
だから豪炎寺はモテモテで。
まだ学校に登校して30分も経ってないのに"お客さん"が7人もやってきた。
(豪炎寺はオレの恋人なのに)
そう心の中で呟いてむくれたってしょうがないのに。
オレ達の関係を知ってるのはサッカー部のみんなしか知らない。
クラスのみんなには言えない秘密の関係。
そんなの分かってる。 分かってるけど…、
豪炎寺が他の子に告白されてチョコを貰ってる姿なんて見たくない。考えたくない。
豪炎寺はオレの恋人だって言えたらいいのに。
ふと視線を鞄に向けてみる。
鞄の中にあるのはピンクのリボンが巻かれた赤い箱。
オレが豪炎寺のために作ったチョコが入ってる。
(このチョコ渡せるかな)
(豪炎寺は貰ってくれるかな)
(…オレの作ったチョコなんかより他の子から貰ったチョコの方がいいんじゃないかな)
何とも言えないモヤモヤしたい持ちを抱えて「悪い」と言いながら戻ってきた豪炎寺に無理やり笑顔を作って「おかえり」と出迎えた。
---------------
何日遅れのバレンタイン話^p^
まもたんが乙女すぎた
2011.2.28