「風丸どうしよう!オレ病気かもしれない!」

「…いきなりどうしたんだ円堂」



午前8時を少し過ぎた頃、俺はいつもより早めに学校へ到着した。

自分の席に着き窓の外を見ればどんよりと曇り空で、これは一雨降るな…なんて考えながら鞄から教科書を出しているとバターン!と一際大きな教室の扉が開く音が教室中に響き渡った。


(一体誰だ?)


扉はゆっくり開けろよ、と心の中で呟き扉の方へ目線を向けるとそこには俺の幼なじみで隣のクラスの円堂の姿が。


「円堂?」


いつも寝坊してやってくる円堂がこんな早くに学校にいるなんて珍しい、なんて考えながらどうした?と声をかけ円堂の元へ近付く。

すると円堂は俺の肩を掴むと俯かせていた顔をバッと勢いよくあげる。そこには少し涙を浮かべて。

そして冒頭の台詞に至るわけだ。


いきなりの台詞と円堂らしからぬ行動にとりあえず円堂の腕を取り屋上に連れていくことにした。

屋上に向かっている間も円堂は始終無言で。




(あの円堂がこんな風になるとは)



よっぽどのことがあったんだろうな、なんて考えながら屋上の扉を開く。



今日は少し風がきつくて空色の髪が宙に踊る。

でもそんなこと気にせずにフェンス近くまで円堂を連れてきて、目線が合うようにと向かい合わせになる。



「どうしたんだ円堂?」

「あ、のさ…」

「ん?」


もう一度どうした?と聞いてみるけどあー…とかうー…としか言わず中々先を言わない円堂を宥めるように頭を撫でてやると決心したのか、「あのな」と再び口にする。



「さっきも…言ったんだけどさ、オレ病気かもしれないんだ…」

「熱があるのか?」

「熱はないんだけど…」


そう言うとまた黙り込んでしまう円堂。
急かしてはいけないと黙って頭を撫で続けていると円堂の目に涙が溜まる一方で。



「円堂?大丈夫だから、俺に言ってみろ」

「…オレおかしい。だって豪炎寺見てるとさ」

「うん」

「顔が赤くなって心臓がすっごくドキドキしてさ、」

「…うん」

「頭撫でられたらすっごく嬉しくて、でもアイツが他の奴らと話してるの見たら心臓が痛くなって」


つらい。俺病気だ。




そう言って本格的に泣きだしてしまった円堂。
そんな円堂に少し慌ててどうしたらいいかと思いついたのがぎゅうっと円堂を抱きしめてやることだった。

昔から円堂が泣くとこうして抱きしめてやっていたな、と思い出して。


「円堂…」

「最近じゃ、近くにいるだけで…心臓がドキドキして、顔も見れなくて…」


先ほども日直で早く学校に来ていた円堂は自主トレしていた豪炎寺に遭遇して挨拶されたのはいいが心臓が煩くなってどうしたらいいか分からず逃げてきたらしい。





(これは、)




「円堂それはな、」



そこまで言って、ふとその先を言ってもいいのかと思った。


円堂の症状が何なのか分かってる。
でもそれを俺から伝えていいのだろうか。


その感情は円堂が自分自身で気がつかないといけない感情だと思うから。




「大丈夫だ円堂、それは病気じゃない」

「ほ、んと…?」

「あぁ。でもその感情は何かは自分で気付かないとな」



俺の言った言葉がイマイチ理解できていないのか首を傾げる円堂に「今は分からなくていいんだ」そう言ってぐいっと目尻に溜まっている涙を拭ってやった。



少しずつでいいから


その感情に気付いていけばいいんだ。






あなたの恋が実りますように。








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お兄ちゃんみたいな風丸先輩が好き





2011.2.10




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