※山崎と坂田
※二人して乙女思考注意




 待ち合わせの時間に1時間半も遅れて平謝りする俺に、全然気にしてないよ、と万事屋の旦那が零した。それでも深々と頭を下げる俺を見て、きっと今は困ったように笑みを浮かべていることだろう。

「そんなに謝らなくても良いのに」
「でも、だって今日は、」

 俺たちが付き合ってちょうど一年目で、旦那はそんなこと覚えてないかもしれないけど、俺は一緒に居たかったからどうにか時間を作った。日が暮れてからしか非番は取れなかったが、それでも旦那に会えるんだと浮かれていたというのに、結局はこのザマだ。情けない。

「――じゃあ、罰」
「罰?」

 旦那の言葉を聞いて俺がようやく顔を上げると目を瞑るように指示をされ、大人しく従って視界を閉じた矢先に、何か軽いものを頭に乗せられた。

「今日、帰るまでそれ外すなよ」
「それが罰ですか?」
「ああ」

 そっと瞼を持ち上げてみたが、頭に乗ったそれは残念ながら俺の視界には映らない。旦那が罰だなんて言うから恐る恐る指先を触れさせてみると、それは拍子抜けするほどに嫌悪を感じないものであった。

「……旦那、これって」
「待ってる間に作ったんだ。絶対お前に似合うと思った」

 今度は曇りのない笑顔で旦那が笑う。俺の頭には、シロツメクサの花で作られた冠が乗っていた。




/幸福